事業から排出されるゴミは「事業ゴミ」と呼ばれ、一般家庭から出るゴミとは区別されます。これから事業を始めようと考えている方のなかには、以下のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
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事業ゴミとは何なのか?
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家庭ゴミとはどう違うのか?
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事業ゴミを処理するには何に注意すればいいのか?
そこで今回の記事では、どのようなものが事業ゴミに該当するのか、そして事業ゴミの分類と捨て方について解説していきます。
事業ゴミとは何?
事業ゴミとは、事業活動によって発生したゴミのことです。事業活動は営利・非営利を問わないため、社会福祉施設のような公共サービス施設や病院、農家、NPOなども事業活動の対象になります。
事業ゴミは、家庭から出る一般ゴミとは違い、集積所に出すことができません。事業主の責任において定められたとおりに処分することが法律で義務付けられています。
事業ゴミは「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに分類されます。それぞれ順番に解説していきます。
家庭ごみとの違いが気になる方は、こちらの記事も併せてチェックしてみてください。
事業ごみと家庭ごみの違いは?よくある疑問についても解説 >>
事業系一般廃棄物
事業系一般廃棄物とは、法令で産業廃棄物に指定された品目以外の廃棄物のことで、以下のものが該当します。
可燃ゴミ | 生ゴミ(調理くず・食べ残し)、紙くず(※1)、木くず(※1) |
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粗大ゴミ | 大型の食器棚・机等、通常の収集では大きすぎて対応できないもののうち、木製のもの(※2) |
し尿 | くみ取りし尿で、人の排泄行為に附帯するトイレットペーパー類、綿類等を含む |
浄化槽に係る汚泥 | 浄化槽方式のものの槽に貯留した汚泥 |
※1:産業廃棄物以外のもの、※2:金属製、プラスチック製のものは産業廃棄物
事業系一般廃棄物には、家庭から出るゴミと同じ類のものがあります。しかし、もし地域のゴミ集積所に事業系一般廃棄物を出して発覚した場合、不法投棄として罰則の対象になることがあります。
事業系一般廃棄物を適切に処理するには、自治体の処理施設へ自ら運び込んで処理を依頼するか、一般廃棄物収集運搬許可業者に委託する方法があります。ゴミの量が多ければ、頻繁に処理施設へ持ち込むのは難しいため、専門業者への委託を検討するのがよいでしょう。
産業廃棄物
産業廃棄物とは、廃棄物処理法によって指定されているゴミのことです。産業廃棄物のなかでもさらに「あらゆる事業活動に伴うもの」と「特定の事業活動に伴うもの」に分けられます。
あらゆる事業活動に伴う産業廃棄物
あらゆる事業活動にともなう産業廃棄物は、以下の表にある12種類です。業種に関わらず事業活動によって出たゴミであれば、産業廃棄物として処理する必要があります。
産業廃棄物の種類 | 具体例 |
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(1)燃え殻 | 石炭がら、焼却炉の残灰、炉清掃残さ物、焼却かす |
(2)汚泥 | 排水処理後及び各種製造業生産工程で排出される泥状のもの、 活性汚泥法による処理後の汚泥、ビルピット汚泥(し尿を含むものを除く)、 カーバイトかす、ペントナイト汚泥、洗車場汚泥、など |
(3)廃油 | 鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄油、切削油、溶剤タールピッチ、など |
(4)廃酸 | 写真定着廃液、廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類など、すべての酸性廃液 |
(5)廃アルカリ | 写真現像廃液、金属せっけん液、廃ソーダ液、などすべてのアルカリ廃液 |
(6)廃プラスチック類 | 以下の固形状・液状のすべての合成高分子系化合物。 合成樹脂くず(発泡スチロール)、合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む) |
(7)ゴムくず | 天然ゴムくず |
(8)金属くず | 鉄鋼、非金属の研磨くず、切削くず、など |
(9)ガラスくず及び陶磁器くず | ガラス類(板ガラス等)、耐火レンガくず、石膏ボード、など |
(10)鉱さい | 鋳物廃砂、電炉等溶解炉かす、ボタ、不良石炭、粉炭かす、など |
(11)コンクリートの破片等 | 工作物の新築、改築又は除去により生じたコンクリート破片、レンガの破片その他これらに類する不要物 |
(12)ばいじん | 大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設、又は産業廃棄物焼却施設において発生する不要物 |
出典:一般廃棄物の概要 産業廃棄物の種類と具体例(法第2条第4項、施行令第2条)
産業廃棄物のなかには、複数の原材料が使用されており、1種類に分別できないものもあります。このような複数の種類に該当するものは、混合廃棄物として別に扱います。
例えば蛍光灯は多くの場合、「(8)金属くず」と「(9)ガラスくず及び陶磁器くず」、「(11)コンクリート破片等」の混合物に分別されます。しかし自治体によっては、蛍光灯に含まれる水銀を汚泥と扱うところもあり、混合物としての判断は分かれるところです。
どのように処分したらいいか、判断に迷うものがあれば委託業者または自治体の担当部署に確認するようにしましょう。
特定の事業活動に伴う産業廃棄物
特定の事業活動にともなう産業廃棄物は、以下の表にある7種類です。指定の業種から排出された特定のゴミになります。
産業廃棄物の種類 | 具体例 |
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(13)紙くず | 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたもの)、 パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うもの)、 出版業(印刷出版を行うもの)、製本業、印刷物加工業から生じる紙くず |
(14)木くず | 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたもの)、木材又は木製品の製造業(家具製品製造業)、 パルプ製造業、輸入材木卸売業からしょうじ木材片、おがくず、バーク類、など |
(15)繊維くず | 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたもの)、 衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業から生ずる木綿くず、羊毛くず等の天然繊維くず |
(16)動植物性残さ | 食料品、医薬品、香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物で、あめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、魚及び獣のあら、など |
(17)動物系固形不要物 | と畜場でと殺又は解体、食鳥処理場において食鳥処理したことで発生した固形状の不要物 |
(18)動物ふん尿 | 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどのふん尿 |
(19)動物死体 | 畜産農業から排出される牛、馬、めん羊、にわとりなどの死体 |
出典:一般廃棄物の概要 産業廃棄物の種類と具体例(法第2条第4項、施行令第2条)
同じ性質のゴミであっても、業種によって事業ゴミの分別は変わるので注意が必要です。例えばコピー用紙は、建設業や出版印刷業などから出れば産業廃棄物(13)紙くずですが、指定業種以外の飲食店やオフィスから出れば事業系一般廃棄物になります。
事業系ゴミの捨て方・廃棄方法
事業主が事業ゴミの適切な処理を怠った場合、罰則を科せられることがあります。そのため分別だけではなく、ゴミの捨て方もしっかり把握しておく必要があります。
事業ゴミに関する罰則については、こちらの記事で解説しています。
事業ごみを家庭ごみとして廃棄した場合の罰則とは?適切に処理する方法を確認しよう >>
事業ゴミを処理する方法は、事業系一般廃棄物と産業廃棄物とで異なります。順番にみていきましょう。
事業系一般廃棄物の場合
事業系一般廃棄物の捨て方には、以下の3通りあります。
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・清掃工場等に自己搬入する
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・許可を受けた委託業者に処理を依頼する
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・行政に回収してもらう(※3)
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※3:自治体によって対応が異なります
1つ目はゴミを排出した地域の清掃工場などに、事業主が自ら持ち込む方法です。この場合、自治体によっては事前の手続きが必要だったり、事業所がわかるパンフレットや名刺などの準備が必要だったりします。
清掃工場などでは、事業ゴミ分別ができているかチェックされることがありますので、しっかりと指定の通りに分別しないといけません。
2つ目は許可を受けた委託業者に依頼して、事業ゴミ回収を依頼する方法です。委託業者を選ぶ際には「一般廃棄物収集運搬業許可」を事業所のある市区町村から受けているか、必ず確認してください。許可の有無は自治体のホームページでチェックできます。
3つ目の行政に回収してもらう方法は、一部の自治体のみで対応しているものになります。事前申し込みや有料チケットが必要といった利用条件がありますが、一般ゴミの集積所に事業ゴミを出すことが可能です。こちらも自治体のホームページで確認してみてください。
自ら事業ゴミを持ち込むことを検討されている方は、こちらの記事も確認しておきましょう。
事業ゴミの持ち込みはできるの?個人事業主の対応についても解説 >>
産業廃棄物の場合
産業廃棄物は原則、自治体では処理できないため、処理するには業者へ委託することになります。委託先を検討する際は、都道府県から「産業廃棄物収集運搬業許可」を受けていることを必ず確認しましょう。
注意すべきは、産業廃棄物収集運搬業許可は、産業廃棄物に指定された品目ごとに必要なことです。処分したい品目の収集運搬許可を業者が保有していなければ、委託することができませんので、必ず業者の保有する許可を確認してください。
事業系一般廃棄物の処分は事業者に委託するのがおすすめ
業者に事業系一般廃棄物の処分を委託するメリットには、以下のようなものがあります。信頼できる委託業者だと、安心して対応をお願いできるでしょう。
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【業者に委託するメリット】
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・機密書類も安全に捨てられる
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・大型ゴミの回収(家具家電、店内設備)も可能
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・リサイクルの提案をしてもらえるので、環境負荷を軽減できる
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・ゴミの処分にかかるコストや手間を削減し、業務に集中できる
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・希望のタイミングや頻度で回収してもらえるため、ゴミが溜まる心配がない
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・事業系一般廃棄物と産業廃棄物、両方の許可を取得している場合、まとめて依頼でき管理しやすい
排出予定の品目をカバーできない業者の場合、不足品目を回収してくれる業者を探さなくてはなりません。そのため、事業系一般廃棄物と産業廃棄物それぞれの許可証を持つ業者なら管理がしやすくなり、事業主にとっては大きなメリットになります。
また、回収頻度の調整や減量といったゴミの処分に関する相談もしやすいでしょう。
業者への委託にどの程度の費用がかかるか、事業形態や営業日数によって左右されるため、一概に概算を出すのは難しいものです。詳しくはこちらのページで事例とともに解説していますので、参考にしてみてください。
事業ごみの処理・回収にかかる料金はどのくらい?業者に委託した場合の費用もご紹介 >>
事業ごみのまとめ
事業ゴミは、事業系一般廃棄物と産業廃棄物に分類され、それぞれ捨て方も異なります。同じ性質のゴミでも業種が違えば捨て方も違い、さらに自治体によってもルールが変わるため、事業主の方の頭を悩ませることがあるかもしれません。
事業ゴミの処分で不安なことがあれば、プロに相談してみましょう。環境のミカタでは、事業系一般廃棄物の回収だけではなく産業廃棄物の回収も可能です。小さなことでも構いませんので、事業ゴミに関するお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。