通常の産業廃棄物よりも、厳格な管理と処理が求められる廃棄物を「特別管理産業廃棄物」といいます。本記事では、特別管理産業廃棄物の定義や分類、処理基準・手順などについて、詳しく解説します。
事業者の皆様が法令を遵守し、適切な管理と処理を行うための情報をまとめていますので、最後までご参照ください。
目次
特別管理産業廃棄物とは?
特別管理産業廃棄物とは、「爆発性・毒性・感染性、その他の健康や生活環境に影響を及ぼすおそれのある性状を有する廃棄物」のことを指します。
その危険性や有害性から、一般的な産業廃棄物よりも厳格な管理が必要とされているのが特徴です。特別管理産業廃棄物は、廃棄物処理法で定められた処理基準に沿って処理するか、許可業者に運搬または処分を委託することが義務付けられています。
また、特別管理産業廃棄物を排出する事業場は、要件を満たす特別管理産業廃棄物管理責任者を選任しなければなりません。
産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の違い
通常の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の違いは、以下のとおりです。
産業廃棄物 | 特別管理産業廃棄物 | |
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処理できる対象種類 | 事業活動にともなって生じる20種類(排出する業種が限定されるものを含む) |
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処理方法 |
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産業廃棄物と大まかな手順は一緒だが、排出から処分までの過程で、一層厳密な管理が求められる |
処理基準 | あり | |
管理責任者 | あり | あり(産業廃棄物の管理責任者よりも、必要な資格・学歴が多くなる) |
<産業廃棄物>
事業活動にともなって生じる20種類の廃棄物です。このうち、6種類(燃え殻・汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ・廃プラスチック類)は法律で、14種類は政令により、それぞれ定められています。
排出する業種が限定される廃棄物に関しては、該当する業種の場合は「産業廃棄物」の対象で、それ以外の場合は「一般廃棄物」として扱われます。例えば「紙くず」の場合、建設業や製造業、紙加工の製造業、新聞業、出版業、製本業・印刷物加工業などに係る業種の場合は産業廃棄物扱いとなり、これらに該当しない業種で排出されたゴミ(例えばインターネット広告業のオフィスで出た印刷物のゴミなど)は一般廃棄物となります。
産業廃棄物の種類について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参考ください。
<特別管理産業廃棄物>
特別管理産業廃棄物は、上述した産業廃棄物のなかでも、有毒性が高いと区分された廃棄物です。そのなかでも、さらに有害性が高レベルなものとして、特定有害産業廃棄物も含まれます。
処理方法は、産業廃棄物の手順とほぼ同じですが、管理責任者を設けなければならないといった違いもあります。
特別管理産業廃棄物の分類
特別管理産業廃棄物は、その性質や由来によって、複数の種類に分けられます。
これらの分類を正確に理解することは、適切な処理方法を選択し、法令を遵守するうえで非常に重要です。特別管理産業廃棄物の種類と概要は、下表をご覧ください。
種類 | 概要 | |
---|---|---|
廃油 | 揮発油類、灯油類、軽油類(難燃性のタールピッチ類等を除く) | |
廃酸 | 著しい腐食性を有する pH2.0以下の廃酸 | |
廃アルカリ | 著しい腐食性を有する pH12.5以上の廃アルカリ | |
感染性産業廃棄物(※) | 医療機関等から排出される産業廃棄物であって、感染性病原体が含まれ、もしくは付着しているおそれのあるもの | |
特定有害産業廃棄物 | 廃PCB等 | 廃PCBおよびPCBを含む廃油 |
PCB汚染物 |
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PCB処理物 | 廃PCB等、またはPCB汚染物を処分するために処理したもので、PCBを含むもの | |
廃水銀等 | (1)特定の施設において生じた廃水銀等 (※)  (2)水銀もしくはその化合物が含まれている産業廃棄物、または水銀使用製品が産業廃棄物となったものから回収した廃水銀 | |
指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥 | |
鉱さい | 重金属等を一定濃度を超えて含むもの | |
廃石綿(アスベスト)等 | 石綿建材除去事業に係るもの、または大気汚染防止法の特定粉じん発生施設が設置されている事業場から生じたもので、飛散するおそれのあるもの | |
燃え殻(※) | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの | |
ばいじん(※) | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの 排出源別一覧表:特別管理産業廃棄物排出源別一覧表(ばいじん、燃え殻) | |
廃油(※) | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの 排出源別一覧表:特別管理産業廃棄物排出源別一覧表(廃油) | |
汚泥、廃酸、廃アルカリ (※) | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの 排出源別一覧表:特別管理産業廃棄物排出源別一覧表(汚泥、廃酸、廃アルカリ) |
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【1】(※)がついている部分は、排出元の施設が限定されています。
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【2】赤字部分は、特別管理産業廃棄物の判定基準等を満たしている場合に、特別管理産業廃棄物とみなされています。
なお、PCBは「ポリ塩化ビフェニル」といい、脂肪に溶けやすい、毒性のある物質のことです。PCBが体内に蓄積されると、全身の倦怠感やしびれ、色素沈着など、さまざまな健康被害の原因になるため、特定有害産業廃棄物に指定されています。
上記の分類を正しく把握し、最適な処理方法を選ぶことは、環境保護と法令遵守の観点からも欠かせません。
特別管理産業廃棄物の排出業者に該当する業種とは?
特別管理産業廃棄物の排出事業者に該当する業種は多様で、業種ごとに規定が設けられています。なかでも、感染性産業廃棄物を排出する医療機関の対象物や判断基準について、詳しく説明します。
医療機関の産業廃棄物
特別管理産業廃棄物は、その性質だけでなく、排出する業種によっても規定が存在します。特に、医療機関で生じる特別管理産業廃棄物には「感染性産業廃棄物」が含まれます。
感染性産業廃棄物とは、医療機関などから排出され、人に感染もしくは感染する恐れのある病原体が含まれる産業廃棄物のことです。具体的には、医療行為などによって廃棄物となった、以下のようなものが挙げられます。
脱脂綿、ガーゼ、包帯、ギプス、紙おむつ、注射針、注射筒、輸血点滴セット、体温計、試験管等の検査器具、有機溶剤、血液、臓器、組織など
このうち、前述のとおり、感染性の高い病原体を含む産業廃棄物が対象となります。
感染性産業廃棄物の判断基準
感染性産業廃棄物は、判断基準が法令で定められています。この基準に沿えば、廃棄する対象物が、感染性廃棄物に該当するか否かの判別が可能です。
まずは、以下の3つの判断基準をご確認ください。
1.形状
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(1)血液、血清、血漿および体液(精液を含む)
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(2)手術等にともなって発生する病理廃棄物(摘出または切除された臓器、組織、敦清にともなう皮膚等)
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(3)血液等が付着した鋭利なもの
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(4)病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの
2.排出場所
感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室および検査室において治療、検査等に使用されたあと、排出されたもの
3.感染症の種類
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(1)感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症および新感染症の治療、検査等に使用されたあと、排出されたもの
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(2)感染症法の四類および五類感染症の治療、検査等に使用されたあと、排出された医療器材、ディスポーザブル製品、衛生材料等(ただし、紙おむつについては、特定の感染症に係るもの等に限る)
上記のうち、どれか一つでも当てはまれば、感染性廃棄物といえます。院内処理が可能なものは、いずれの判断基準にも該当しなかった場合です。
ただし、基準に一つも合致しなかったとしても、輸血用血液製剤または鋭利なものである場合は、感染性廃棄物と同等の扱いになるため注意が必要です。
院内で感染性廃棄物を破棄する際は、「感染性廃棄物」と「それ以外の廃棄物」に分別します。感染性廃棄物を処分するケースでは、処理委託業者にあらかじめ、感染性廃棄物の種類・数量・性状などを知らせなければなりません。
医療関係機関等
感染性産業廃棄物の対象となる医療機関は、以下のとおりです。
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病院
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診療所(保健所、血液センター等)
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衛生検査所
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介護老人保健施設
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介護医療院
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助産所
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動物の診療施設
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国または地方公共団体の試験研究機関(医学、歯学、薬学、獣医学に係るもの)
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大学およびその付属試験研究機関(医学、歯学、薬学、獣医学に係るもの)
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学術研究または製品の製造もしくは技術の改良、考案、発明に係る試験研究を行う研究所(医学、歯学、薬学、獣医学に係るもの)
これらに当てはまる医療関係機関では、先述の判断フローを参考にして、適切に処理しましょう。
その他の特別管理産業廃棄物該当業種
その他、特別管理産業廃棄物の排出業者に該当する業種は多彩です。例えば、汚泥、廃酸、廃アルカリの排出源としては、以下の業種が挙げられます。
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・紡績業、繊維製品製造・加工業
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・木材薬品処理業
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・合成ゴム製造業
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・石油化学工業
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・鉄鋼業 など
特別管理産業廃棄物を排出する業種に当てはまる事業者の方は、後述する基準にしたがって、相応の処理を行ってください。
特別管理産業廃棄物の管理には責任者が必要
特別管理産業廃棄物の適切な管理と処理を確保するため、法律では、特別管理産業廃棄物管理責任者の設置を義務付けています。
この責任者には、特定の資格や経験を備えた人物が担当することが必要です。以下では、責任者の要件と役割について詳しく説明します。
特別管理産業廃棄物管理責任者の要件
特別管理産業廃棄物を排出する事業者では、管理責任者を選任しなければなりません。責任者になるには、いくつかの要件があります。
<感染性産業廃棄物を扱う場合>
医師・歯科医師・薬剤師・獣医師・保健師・助産師・看護師・臨床検査技師・衛生検査技師または歯科衛生士 |
2年以上、環境衛生指導員の職にあった者 |
大学や高等専門学校において、医学・薬学・保健学・衛生学もしくは獣医学の課程を修めて卒業した者。または、これと同等以上の知識を有すると認められる者 |
<感染性産業廃棄物以外を扱う場合>
資格・学歴 | 課程 | 修了した科目・学科 | 廃棄物の処理に関する技術上の実務経験 |
環境衛生指導員 | - | - | 2年以上 |
大学 | 理学・薬学・工学・農学 | 衛生工学・化学工学 | 2年以上 |
理学・薬学・工学・農学に相当する課程 | 衛生工学・化学工学 以外 | 3年以上 | |
短期大学・高等専門学校 | 理学・薬学・工学・農学 | 衛生工学・化学工学 | 4年以上 |
理学・薬学・工学・農学に相当する課程 | 衛生工学・化学工学 以外 | 5年以上 | |
高等学校・旧制中学校 | - | 土木科・化学科に相当する学科 | 6年以上 |
- | 理学・農学・工学に関する科目、これらに相当する科目 | 7年以上 | |
学歴要件 | なし | 10年以上 | |
※ | または、上記の内容と同等の知識を有すると認められる者 |
特別管理産業廃棄物責任者の役割
特別管理産業廃棄物の管理者の役割は、事業場での特別管理産業廃棄物に関わる業務を、廃棄物処理法に基づいて実施することです。具体的には、以下のような業務があります。
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特別管理産業廃棄物の排出状況を把握する
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特別管理産業廃棄物の処理計画を立案する
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保管状況の確認
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委託業者の選定や、適正な委託の実施
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マニフェストの交付 など
これらの役割を適切に遂行することで、特別管理産業廃棄物の適正な管理と処理を確保し、環境保護と法令遵守を実現します。
特別管理産業廃棄物の処理の手順
特別管理産業廃棄物の処理方法は、法律で厳密に定められています。相応の処理を行うことは、事業者の法的責任であり、環境保護にも直結する重要な課題です。
以下では、自社で運搬・処理する場合と、業者に委託する場合について説明します。
自社で運搬・処分する場合
自社で産業廃棄物や特別管理産業廃棄物を運搬・処理する場合は、法令によって手順や基準が決められています。自社で運搬する際は、特別管理産業廃棄物における処理基準の、収集運搬基準と同じように配慮しなくてはなりません。
運搬車には、産業廃棄物を運搬している旨を知らせる書面を車体の両側に貼り付けたうえで、産業廃棄物が飛散したり、流出したりしないように注意が必要です。
自社運搬のケースについて、詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
業者に依頼する場合
委託する場合は、適切な業者を十分に吟味して選定する必要があります。法令遵守と環境保護の観点からも、信頼できる業者を選ぶことが不可欠です。
委託基準を確認する
特別管理産業廃棄物を業者に委託する場合は、許可業者に任せましょう。委託は、特別管理産業廃棄物収集運搬業者と、特別管理産業廃棄物処分業者の双方との契約が必須です。特別管理産業廃棄物の排出から最終処分まで、適正な処置が求められます。
委託する際は、業者に与えられた許可の種類や内容を十分に確認し、法令に基づいた妥当な処理が可能かどうかを、慎重に判断することが重要です。
委託契約書を締結する
収集運搬業者や処分業者を選定する場合は、委託先の業者が排出先を確保し、都道府県知事より処分先の許可を得ている必要があります。
委託業者と契約書を締結する際には、各事業者が産廃情報ネットで公表している情報をもとに、業者が保有している許可の種類や内容に配慮してください。
産廃情報ネットでは、優良産廃処理業者認定制度で認定された業者も確認することができます。処分業者を選ぶときは、現地へ出向き、廃棄物を適切に処理できる許可を持っているか、処分場の環境・体制が整っているか、などを確認することも大切です。
なお、環境のミカタは、各行政機関より「優良認定業者」として認められており、厳しい基準のもとで、責任をもって安全に処理を行います。
マニフェストを使用する
マニフェストとは、処理を委託した産業廃棄物などが契約通りに処理されたか、確認するための管理票です。このマニフェストには、交付年月日、産業廃棄物の種類や量、運搬を委託する業者名などを記載します。
廃棄物を収集運搬業者に引き渡す際、運搬車・運搬先・廃棄物の種類ごとに、それぞれ交付することが義務付けられています。マニフェストは、廃棄物の移動状況を管理するのに必要な書面です。交付しない、または記載に虚偽や不備がある、保管していないなどの場合、行政処分の対象となります。
紙のものと電子上のものと、タイプは2種類です。電子マニフェストのほうが、事務処理の効率化やデータの透明性の確保の点で便利です。
また、2020年から、年間50トン以上の特別管理産業廃棄物を排出している事業場で、PCB廃棄物以外の処理を委託する場合は、電子マニフェストの使用が義務付けられています。
特別管理産業廃棄物の処理基準
特別管理産業廃棄物を処理する際にも基準が設けられています。特別管理産業廃棄物の処理基準には、以下の4つがあります。
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・保管基準
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・収集運搬基準
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・中間処理基準
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・埋立地処分基準
特別管理産業廃棄物の保管から埋立処理まで、すべての過程で廃棄物が飛散したり流出したりしないように配慮が必要です。中間処理基準では、燃焼温度800℃以上での焼却が欠かせません。
埋立処理の仕方も法律で決まっており、特定有害産業廃棄物の処分は遮断型最終処分場で行い、それ以外は管理型最終処分場で行います。
このほか、各過程で処理基準が定められており、法律に則って正しく処理することが求められます。収集運搬時の詳細について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
まとめ
特別管理産業廃棄物は、その危険性や有害性から、通常の産業廃棄物よりも厳格な管理と処理が求められます。本記事では、特別管理産業廃棄物の定義や分類、処理基準・手順について詳しく解説しました。
適切な管理と処理を行うためには、特別管理産業廃棄物管理責任者の設置のほか、正しい分類と判断、法令に基づいた処理手順の遵守が不可欠です。また、業者に委託する場合は、相応の許可を持つ信頼できる業者を選定し、マニフェストを適切に使用することが重要です。
環境のミカタは、特別管理産業廃棄物を含む産業廃棄物の適正処理について、豊富な経験と実績を持つ優良産廃処理業者です。法令遵守はもちろん、環境保護に配慮した安全かつ効率的な処理サービスを提供しています。
特別管理産業廃棄物の処理でお悩みの事業者様は、ぜひ環境のミカタにご相談ください。