
金属のリサイクルは、限りある資源を有効活用し、環境負荷を軽減するために重要な取り組みです。正しいリサイクル方法を理解したうえで、適切に対応しましょう。
本記事では、金属のリサイクルについて、その重要性やリサイクルの流れ、現状と課題などを詳しく解説します。
目次
金属のリサイクルとは
金属のリサイクルとは、金属を取り扱う工場や日常生活から出るゴミに含まれた鉄やアルミニウム、鋼などの金属を再利用することです。金属はリサイクルをしても劣化せず、従来の品質をそのまま保つことができます。
リサイクルできる金属の種類

リサイクルできる金属には「鉄金属」と「非鉄金属」の2種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
鉄金属
鉄は、最も身近な金属です。鉄に炭素を加えることで鋼になり、炭素の含有率によって硬さや強さが異なります。
一般的に利用されている鉄は、ほとんどがこの鋼です。鋼は、自動車、家電製品、ダクト、鉄筋、電気配線、ドラムなど、さまざまな製品に用いられています。
鉄金属は磁気を帯びているものがほとんどのため、電磁石を使用して非鉄金属と分別します。
非鉄金属
非鉄金属とは、文字通り鉄ではない金属のことです。主に以下のようなものが挙げられます。
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・軽金属:アルミニウム、マグネシウム、チタン
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・ベースメタル:銅、亜鉛、鉛、スズ
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・レアメタル:チタン、ニッケル、コバルト、モリブデン
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・貴金属:金、銀、プラチナ、パラジウム
金属ごとに特性は異なります。リサイクルの際には特性に合わせた処理を行ったうえ、適切に分類しなくてはなりません。
なお、非鉄金属はリサイクルの過程でも化学的性質を失わないので、無限にリサイクルできます。
リサイクルできない金属の種類
以下の金属は、リサイクルできません。
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・ウラン、プルトニウムなどの放射性金属
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・水銀・鉛などの有害金属
例えば、液晶テレビの蛍光灯に使用される水銀や、古いブラウン管に含まれる鉛などが挙げられます。
有害中金属に指定されている物質は主に「特定有害産業廃棄物」として処理されるため、必要な許可を受けている処理業者に処理を依頼する必要があります。
リサイクルできる金属を含む身近な例
リサイクルできる金属は、日常生活のなかにもたくさん存在します。
例えば、エアコンには鉄や銅、アルミニウムなどが含まれます。パソコンは、金や銀、銅、インジウム、ルテニウム、リチウムなどを含む製品です。
これらの機械が壊れて使えなくなった際に、リサイクルを行えば、各製品に含まれる金属を取り出し、資源として再利用することが可能です。

なお、パソコンを手放す際にはデータの消去などを行い、適切な方法で廃棄しなければなりません。社内に知識を持つ方がいれば専任で依頼できますが、不在の場合には対応に多くの時間と手間を要します。さらに完全に情報を消去できない場合に、情報漏洩といったセキュリティリスクが生じるのも懸念点です。
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金属のリサイクルの流れ
金属をリサイクルする際の流れは、以下のとおりです。
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回収
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分別・洗浄
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溶解・精錬
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再資源化
各工程について、詳しく紹介します。
1. 回収
工場で排出された金属スクラップや、一般家庭、事業所からの使用済み金属製品を回収します。金属はリサイクルセンターに持ち込まれるか、廃棄物中継ステーションに運ばれます。
このうち、特定家庭用機器廃棄物については、家庭リサイクル法に基づいた手続きが必要となる点に注意が必要です。
家電リサイクル法(正式名称:特定家庭用機器再商品化法)は、資源の有効活用と廃棄物の減量を目的に、対象となる家電製品から有用な部品や材料を回収・リサイクルすることを義務づけた法律です。
対象となる特定家庭用機器は以下の4品目です。
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・エアコン
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・テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
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・冷蔵庫・冷凍庫
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・洗濯機・衣類乾燥機
この法律では、製造業者にはリサイクルの義務、小売業者には製品の回収義務が課されています。
また、消費者は不要になった家電製品を小売業者に引き渡すとともに、リサイクル料金と収集・運搬料金を負担する必要があります。
なお、リサイクル料金は家電メーカーによって異なります。事前にメーカーに確認し、必要な金額や手続きを把握しておくと安心です。
参考:家電4品目の「正しい処分」早わかり!|家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)
2. 分別・洗浄
回収された金属から、リサイクル可能なものを選別します。鉄が磁石にくっつく性質を利用し、磁力によって鉄金属と非鉄金属に分別するのが一般的です。
自動車や家電製品など、非金属以外の廃棄物を含むものは、シュレッダー加工を行なってから分別します。シュレッダー加工とは、高速で回転するハンマーによって、細かく粉砕する加工方法のことです。粉砕後は、鉄金属、非鉄金属、非金属に分別し、非金属に関してはゴミとして処理します。
分別後、不純物の除去や、付着したコーティングを取り除くために洗浄を行います。
3. 溶解・精錬
分別と洗浄のあとは、高温で金属を溶解します。長さや厚みのある金属に関しては、一定の長さに切断する「シャーリング加工」が施されます。金属の大きさを小さくすることで、溶解効率を向上させる方法です。
溶解後、不純物を取り除くことで純度の高い金属へと戻す工程である「精錬」を行います。
精錬方法には主に以下の方法があります。
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・湿式精錬:酸やアルカリ、溶媒などの液体を用いて精錬する方法
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・乾式精錬:水を用いず、高温加熱することで精錬する方法
4. 再資源化
精錬を経て加工された金属スクラップは、再び金属資源として、各種製鋼メーカーや合金メーカーに出荷されます。
冒頭で述べたとおり、金属はリサイクルを繰り返しても品質が劣化しません。そのため、新たに作られた金属と比較しても遜色なく活用可能です。
金属のリサイクルの重要性
金属のリサイクルは、資源の有効活用やエネルギー削減、環境保護のために重要な取り組みです。ここでは、金属のリサイクルの重要性について解説します。
資源の有効活用・循環型社会の実現のため
日本は資源の乏しさから外国輸入への依存度が高く、国内における資源の安定供給は国家的な課題となっています。
不要になった金属をリサイクルし、再資源化すれば、国内での資源調達が可能です。これにより、輸入への依存度を軽減できるとともに、国内の資源が枯渇するリスクを低減できます。
特に金属はリサイクルしても品質が劣化しない点が特徴です。金属リサイクルを推進することで、資源の国内供給率の向上および、循環型社会の構築に寄与します。
エネルギー削減・環境保護のため
金属をリサイクルすれば廃棄物の量が減るため、生態系への影響も軽減でき、環境保護につながります。
また、天然の金属資源から金属を作り出す場合には、採掘や不純物の排除、輸送や精錬に多大なエネルギーが必要です。しかし、リサイクルした金属はすでに不純物が取り除かれているため少量のエネルギーで利用できます。
このように、金属のリサイクルは、資源の有効活用やエネルギーの削減による環境保全の観点からも効果的です。
カーボンニュートラルとは?目的や目標、日本と世界の取り組みを解説>>
リサイクルした金属の用途
ここでは、リサイクルした金属の主な用途を3つ紹介します。
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・製鋼原料
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・形鋼
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・属パーツ
製鋼原料
リサイクルした鉄金属は、製鋼原料として製鋼メーカーに出荷されます。そこで加工され、鉄版や鉄パイプ、鉄線など、さまざまな製品に生まれ変わります。
形鋼
用途に応じて、断面の形が異なる鋼材に形鋼されます。なかでも「棒鋼」と「H形鋼」が代表的です。
棒鋼とは、棒状の鋼材を指します。階段や手すり、コンクリートの構造などの建設用途のほか、機械の構造部材、ボルト、ナットなどの素材としても活用可能です。
H形鋼は、名前の通り断面がH字型になっている鋼材です。接合しやすいため、建築や橋梁などに使われます。高速道路の基礎杭にも使用されます。
金属パーツ
リサイクル金属はさまざまな金属パーツとして利用されます。例えば自動車部品、スチール缶、室外機、バッテリー、ビニール線、鉄線、銅線、電線、通信ケーブル、アクセサリー、日用品などです。
金属のリサイクルの現状・課題
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、金属資源は必要不可欠であり、需要が急激に高まっています。その結果、レアアース、リチウム、ニッケル、コバルトなどのレアメタルに関しては需要が逼迫し、国内の資源が枯渇しているのが現状です。
そのため、今後は金属資源の自給率向上が重要となり、金属リサイクルの役割も高まると予測されます。

画像出典:令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)
環境省の公表した「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)」によると、金属くずは100%近くリサイクルされているといわれています。
ただし、実際には金属資源が含まれていても、他の廃棄物と同様に焼却や埋め立て処理をされているケースも多いです。そのため正確なリサイクル数を調査する方法が確立されておらず、実状を把握しきれていません。
金属リサイクルによる環境保全および持続可能な社会の実現のためにも、まずは金属のリサイクルに関する正しい知識を身に着けることが大切です。
そのうえで、金属を適切に分別して捨てる、適切な金属リサイクル処理を行う業者への依頼を行うなどの対策を進める必要があります。一人ひとりが身近な取り組みを行い、金属のリサイクルを促進していくことが重要です。
まとめ
金属のリサイクルについて、その重要性やリサイクルの流れ、現状と課題などを詳しく解説しました。金属のリサイクルは、限りある資源を有効活用し、環境負荷を軽減するために重要な取り組みです。
リサイクルできる金属には鉄金属と非鉄金属があり、それぞれ適切な処理を行うことで、品質を保ったまま再資源化が可能です。資源の有効活用やエネルギー削減、環境保護のために重要な役割を担っているのです。
一方で金属のリサイクルには、正確なリサイクル数の把握などの課題もあります。金属リサイクルによる環境保全および持続可能な社会の実現のためにも、金属のリサイクルに関する正しい知識を身に着けましょう。
環境のミカタでは、金属の回収に対応しています。許可認定のもと、責任を持って収集運搬いたします。金属のリサイクルを検討している静岡県近郊の事業者様はぜひご相談ください。

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