近年、プラスチックごみは、マイクロプラスチックによる海洋汚染などが問題視され、見直そうという動きが広まっています。特に日本ではプラスチックごみの発生量が多いため、リサイクルへの取り組みに関心が高まってきています。
しかし、プラスチックごみを分別していても、リサイクルすると何になるのか、具体的にはわからない方もいるでしょう。
プラスチックはリサイクルによって、新しいプラスチック製品(衣類やペットボトルなど)に生まれ変わったり、化学製品の原料や燃料になったりと再利用されています。
今回は、プラスチックをリサイクルする方法と、リサイクルから生まれる製品や燃料の種類についてご紹介します。
プラスチックリサイクル方法は主に3種類
廃プラスチックは、回収しただけではリサイクルできません。プラスチックをリサイクル可能な状態にするためには、主に以下の3通りのリサイクル方法で形態を変えることになります。
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・マテリアルリサイクル
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・ケミカルリサイクル
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・サーマルリサイクル
それぞれのリサイクル方法を順に解説していきます。
マテリアルリサイクル:新しい製品を作る
マテリアルリサイクルとは、回収したプラスチックごみを原料の状態に戻し、新しい製品へと再生する方法です。マテリアルリサイクルには、さらに「レベルマテリアルリサイクル」と「ダウンマテリアルリサイクル」の2種類があります。
レベルマテリアルリサイクルとは、原料に戻す前と同様の製品に再生させることです。例えば、使用済みペットボトルを原料に戻し、その原料を使って新しいペットボトルを作ります。
しかし、同じ製品の原料にするには品質が満たないときがあります。その場合、ダウングレード(格下げ)した分野の製品に再生します。このように違う製品に再生することをダウンマテリアルリサイクルといいます。
廃棄物 | リサイクル後の製品例 |
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使用済ペットボトル | 作業着やユニフォームなどの衣料品 |
使用済ペットボトルのキャップ | ボールペンやクリアファイルなどの文房具 |
トレーやレジ袋などの包装廃材 | ごみ袋や水切りネットなど |
ケミカルリサイクル:原料に分解して再利用する
ケミカルリサイクルとは、使用済みプラスチックに化学的な処理をおこない、組成変換したのちに原料として再利用する方法です。ケミカルリサイクルでは製品を作ることはせず、燃料として再利用されます。
ケミカルリサイクル方法には、以下の5つの方法があります。
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・油化
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・ガス化
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・原料・モノマー化
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・コークス炉化学原料
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・高炉原料化
油化|廃プラスチックを油に戻す
油化とは、石油から作られるプラスチックを熱で分解して油に戻す方法です。ただし、コストの観点から現在ではあまり活用されていません。
油化をおこなう際、良質な油にするために、塩化ビニルを取り除く必要があります。さらに熱分解には、大量のエネルギーが必要になります。こういった理由から、リサイクルコストが高くなってしまうため、採算がとれないとされています。
ガス化|廃プラスチックを気体化する
ガス化とは、プラスチックを熱で分解して気体(ガス)にする方法です。プラスチックを燃やすと二酸化炭素と水素が発生します。ここに酸素と蒸気を加えると、炭化水素や一酸化炭素、水素を作ることができます。
ガス化によって回収した合成ガスは、二酸化炭素なら炭酸飲料のガスやドライアイスなどに、一酸化炭素や水素ならアンモニアの原料や燃料電池自動車の充電に再利用できます。ガス化であれば、汚れや不純物が混ざったプラスチックでもリサイクルが可能です。
原料・モノマー化|分子レベルまで分解する
プラスチックは、たくさんの分子がつなぎ合わさってできています。原料・モノマー化とは、化学反応を利用してプラスチックの分子を最小単位(モノマー)にまで分解し、原料として使える状態へ戻して再利用することです。
以前は、原油から作ったペットボトルと同等の品質を、再生資源から作ることは難しいとされていました。しかし、現在ではモノマー化技術の進歩により、使用済みプラスチックから新品同様のペットボトルを作ることが可能になっています。
コークス炉化学原料化|発電や高炉に使用できる
コークス炉化学原料化とは、廃プラスチックを粉砕し塩化ビニルを取り除いたあと、コークス炉に入れ化学原料に変えることです。コークス炉に入れてできる化学原料には、以下のものがあります。
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・炭化水素油
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・コークス
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・コークス炉ガス
コークス炉から出てきた炭化水素油は、化成工場で再利用されます。コークス(※1)は製鉄所の高炉(※2)に、そしてコークス炉ガスは発電などに利用されます。
コークス炉化学原料化では、処理過程で有害物質が出ないうえ、廃プラスチックをほぼ100%再利用できるところがポイントです。
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※1:コークスは、石炭を蒸し焼きにしたもの
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※2:高炉は鉄鉱石を熱処理して、鉄を取り出すための場所
高炉原料化|鉄を作るために行われる
製鉄所では、鉄鉱石とコークスを高炉に投入し、鉄を作っています。プラスチックは炭素と水素でできているため、廃プラスチックをコークスの代替資源に再利用できないかと開発されたのが、高炉原料化という方法です。
高炉原料化では水素を有効利用できるほか、二酸化炭素の排出削減と天然資源である原料炭の節約に貢献しています。
サーマルリサイクル:焼却時の熱エネルギーを活用する
サーマルリサイクルとは、不純物が混ざり選別が困難な廃プラスチックを燃やし、発生した熱エネルギーを利用する方法です。サーマルリサイクルには、主に以下の3つの方法があります。
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・固形燃料化
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・ごみ焼却の熱利用・発電
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・セメント原料と燃焼補助剤に利用
それぞれ順に解説していきます。
固形燃料化
廃プラスチックから、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)という固形燃料を作ることができます。RPFは、廃プラスチックと古紙のうち、マテリアルリサイクルが困難なプラスチック類がコートされたラミネート紙などを混ぜて砕き、成形圧縮して固めたものです。
プラスチックは焼却すると紙ごみの約3倍の発熱量になるため、高い熱量を得られる貴重な燃料になります。また、プラスチックと紙の混入割合を調節すれば、熱量を加減することが可能です。
環境のミカタでもRPFの生産に取り組んでいます。RPFについてもっと知りたい方は、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
新燃料「RPF」の社会・企業における意義は?使用できる廃棄物も解説 >>
ごみ焼却熱利用・発電
ごみを焼却する際に出る余熱は、浴場や温水プールなどのボイラーや発電への活用が可能です。平成30年度の統計では全国の焼却施設が1,082ヵ所あり、そのうち余熱が供給されている施設は748ヵ所ありました。
特に近年では、ごみ焼却熱は発電手段の1つとして注目されており、発電設備を有する焼却施設が増加傾向にあります。
プラスチックの焼却は過去に、ダイオキシンなどの有害物質の発生が問題になりましたが、現在の焼却施設では有害物質が出ないようになっています。また焼却すると埋立地へ運ぶごみを減らせるため、環境負荷の軽減に貢献できます。
セメント原・燃料化
セメント製造にはセメントキルン(回転式窯)での焼成工程があり、以前から廃棄物を燃焼補助剤として活用してきました。特に廃プラスチックからは高い熱量を得られるので、高い燃焼温度が必要なセメント業にとっては利用価値のある資源です。
燃焼補助剤には廃プラスチックのほか、廃タイヤや廃木材、廃油なども利用されます。さらに燃料として燃やしたあとの灰やばいじんは、セメント原料の一部として利用することが可能です。
まとめ
資源の少ない日本でプラスチックは貴重な資源のため、可能な限り再利用しなければなりません。プラスチックのリサイクルは、今回ご紹介したように様々な取り組みが日々行われています。
プラスチックを分別するという何気ない行動でも、環境負荷の軽減に貢献できることがわかります。ただしリサイクルできるのは、すべてのプラスチックに当てはまるわけではなく、特定のマークが付いているプラスチックに限られます。
環境のミカタでは廃品物の回収を通して、循環型社会の実現に貢献しており、今回ご紹介した固形燃料RPFの生成にも積極的に取り組んでいます。飲食店や事業所などで「環境に配慮した廃棄物処理をしたい」という方は、ぜひ環境のミカタへご相談ください。