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コラム
2024.12.25

ゼロエミッションとは?国や自治体・企業の取り組み事例、実現に向けてできることを解説

 

ゼロエミッションへの関心が高まる昨今、国や自治体、企業では、その実現に向けた取り組みが加速しています。

この記事では、ゼロエミッションの意義と実践事例に加えて、実現に向けてできることをわかりやすく解説します。現状と課題についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ゼロエミッションとは

まずは、ゼロエミッションの意味や概要、カーボンニュートラル・脱炭素との違いについて解説します。

ゼロエミッションは廃棄物の排出をゼロにすること

ゼロエミッションとは、1994年に国際連合大学によって提唱された「廃棄物の排出をゼロにする」という考え方です。市民活動や企業活動、自治体の活動などで生じた廃棄物を他の企業が再利用することで、廃棄物の排出(エミッション)を可能な限りゼロに近づける取り組みを指します。

ゼロエミッションは、例えば以下のような問題を対象としています。

  • ・温室効果ガス

  • ・大気汚染物質

  • ・食糧廃棄物

  • ・水質汚濁物質

今回は特に、温室効果ガスについてのゼロエミッションを説明します。気候変動においては「温室効果ガスの排出をゼロにする」という意味で用いられることもあります。

カーボンニュートラル・脱炭素との比較

ゼロエミッションと混同しやすい用語として、カーボンニュートラルや脱炭素があります。

【カーボンニュートラルとの違い】

カーボンニュートラルは、CO2(二酸化炭素)、メタン、窒素酸化物などの温室効果ガスの排出を実質的にゼロにすることです。

ゼロエミッションがさまざまな廃棄物をゼロにすることを目指すのに対し、カーボンニュートラルは温室効果ガスに限定しています。温室効果ガスの排出を吸収分と相殺することでゼロにする取り組みであり、両者はやり方が異なります。

【脱炭素との違い】

脱炭素は、二酸化炭素の排出をゼロにする取り組みです。そのため、脱炭素はゼロエミッションの一つといえます。

カーボンニュートラルとは?目的や目標、日本と世界の取り組みを解説>>

 

ゼロエミッションが重要視される理由

ゼロエミッションが重要視されるようになった背景には、2015年のパリ協定による「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という地球規模の共通目標に基づいた、地球温暖化や気候変動緩和への取り組みの強まりがあります。

日本では高度経済成長とともに廃棄物が増加しており、一般廃棄物は1955年に621万トンだったのに対し、1980年では4,394万トンに急増。その後2000年にピークの5,483万トンとなりました。

産業廃棄物も同様に、排出量はバブル期を中心に急増し、2005年にピークの42,168万トンを記録しています。廃棄物や単純焼却量が増加した結果、温室効果ガスも増え、2000年には温室効果ガスの排出量もピークを迎えました。

出典:日本の廃棄物処理の 歴史と現状

このように廃棄物の排出量と、環境悪化を引き起こす温室効果ガスには密接な関係があります。地球温暖化や気候変動への対策を行い、CO2をはじめとした温室効果ガス排出量の削減目標を実現するために、ゼロエミッションが重要となっています。

ゼロエミッション実現に向けた取り組みの具体例

ゼロエミッションの実現に向けて、国や自治体、企業によるさまざまな取り組みが行われています。ここでは、代表的な事例をいくつか紹介します。

国や自治体による取り組み

国や自治体は、ゼロエミッションを実現するため、下記のような施策を推進しています。

  • ・エコタウン事業

  • ・ゼロエミ・チャレンジ

  • ・ゼロエミッション東京

それぞれ詳しく解説します。

エコタウン事業

エコタウン事業は、ゼロエミッションと産業振興、地域活性化を目的として、1997年に政府によって始動した制度です。2006年まで、全国で全26の自治体がエコタウンとして承認されました。

ゼロエミッション実現のために、各種リサイクル法の制定や、循環資源の収集インフラ整備などが行われました。リサイクル法では家電や食品など資源を回収する仕組みを定め、収集インフラ整備では、リサイクルポートの指定など広い地域に及んでいます。

地域の特性に合わせて都道府県または政令指定都市がプランを作り、環境省と経済産業省の共同承認を受けることで支援が受けられるようになります。

例えば、北九州市では教育・基礎研究、技術・実証研究、事業化の3点を総合的に展開し、2002年にはさらに改訂したプランを市域全体に拡大。再資源化事業によって2016年度には、天然資源からの製造に比べて、年間CO2排出量43.3万トン減と大幅削減に成功しました。

参考:エコタウンの 歩みと発展

ゼロエミ・チャレンジ

ゼロエミ・チャレンジとは、脱炭素社会の実現のためにイノベーションに取り組んでいる企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」と位置づけリスト化する、経済産業省主導のプロジェクトです。

第一弾として、2020年に28のプロジェクトを対象に企業リストを作成しました。翌年の第二弾ではリストの更新と拡大を行い、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)サミット2021で公表しています。

企業は「ゼロエミ・チャレンジ企業」に選定されることで、顧客や社会からのイメージを向上できるほか、投資家へのアピールが可能となります。

ゼロエミッション東京

2019年5月に東京都は、U20東京メイヤーズ・サミットで「ゼロエミッション東京」の実現を宣言しました。ゼロエミッション東京とは、平均気温の上昇を1.5℃に抑えるために、2050年までにCO2排出実質ゼロに貢献する取り組みのことです。

実現に向け、東京都の特性に合わせて6分野14政策の戦略を策定したほか、具体的なロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を示しています。

 

ゼロエミッション東京戦略の体系 内容
エネルギーセクター
  1. ①再生可能エネルギーの基幹エネルギー化
  2. ②水素エネルギーの普及拡大
都市インフラセクター(建築物編)
  1. ③ゼロエミッションビルの拡大
都市インフラセクター(運輸編)
  1. ④ゼロエミッションビークルの普及促進 <※>
資源・産業セクター
  1. ⑤3Rの推進
  2. ⑥プラスチック対策 <※>
  3. ⑦食品ロス対策
  4. ⑧フロン対策
気候変動適応セクター
  1. ⑨適応策の強化 <※>
共感と協働 -エンゲージメント&インクルージョン-
  1. ⑩多様な主体と連携したムーブメントと社会システムの変革
  2. ⑪区市町村との連携強化
  3. ⑫都庁の率先行動
  4. ⑬世界諸都市等との連携強化
  5. ⑭サステナブルファイナンスの推進

出典:ゼロエミッション東京戦略|ゼロエミッション東京|東京都環境局

<※>個別計画・プログラム同時公表

企業による取り組み

企業でも、ゼロエミッションの実現を目指し、省エネやリサイクルなどのさまざまな取り組みを行っています。ここでは、下記の3社の取り組みを紹介します。

  • ・日産自動車

  • ・旭化成

  • ・サントリーホールディングス

日産自動車

日産自動車は2050年までに自社の事業活動を含め、自動車のライフサイクル全体のカーボンニュートラル実現を目指しています。

ガソリンエンジンで発電して動力とする「e-POWER」と「電気自動車」を柱に開発。また、バッテリーもリサイクル活用できるよう技術開発にも注力しているほか、車種によって安価な充電が可能となる電気料金プランを提供しています。

旭化成

旭化成は独自素材のキュプラを生産する工場で、自社所有の発電設備を使用しています。生産過程で排出された繊維くずを燃料として発電に再利用するほか、工場からの廃棄物をリサイクルすることを徹底。廃棄物を削減・再利用し、埋め立て処分になる廃棄物の排出をなくすことを目指しています。

その結果、現在はほぼ100%(2016年度実績99.8%)のゼロエミッションを実現しています。

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスは、工場で使われる燃料を変更しています。重油から、熱量あたりのCO2排出量が少ない「都市ガス」や「液化天然ガス」に転換して省エネを実現し、CO2排出量を削減。

2021年から稼働している長野県のサントリー工場では、グループで初めてCO2排出実質ゼロを実現しました。具体的には、バイオマス燃料を用いたボイラーの導入や、再生可能エネルギー由来の電力調達を行っています。

その他の工場ではコジェネレーションシステムを導入して、CO2の排出量を20〜30%削減しています。コジェネレーション(熱電併給)システムとは、発電したときに生じる熱を二次利用して、エネルギーを効率的に活用する仕組みのことです。

例えば、ビールの仕込みやコーヒー・お茶の抽出時に必要な熱源の一部として、自家発電で生じた熱を有効活用しています。

ゼロエミッションの現状・課題

ゼロエミッションへの取り組みにより、温室効果ガス排出量は減少傾向にありますが、企業への浸透度合いやリサイクルの質向上などの課題も残されています。

現状

出典:廃棄物分野における地球温暖化対策について|環境省

廃棄物分野における温室効果ガス排出量は、2000年代以降減少傾向にあります。2010年度台には横ばいで推移していたものの、2019年度以降再び減少傾向が見られ、2022年度は約3,668万トンでした。この減少の背景には、ゼロエミッションの取り組みの一つである、資源循環の促進が関係しています。

なお、2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)によると、2022年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は約10億8,500万トン(CO2換算)です。前年度より2.3%(約2,510万トン)、2013年度と比べると22.9%(約3億2,210万トン)それぞれ減少しています。

過去最低値を記録し、2050年ネットゼロ(※)に向けて順調に推移しているといえます。

※ネットゼロとは、温室効果ガス排出量を「ネット=正味(排出量から吸収量や除去量を差し引いた合計)」でゼロにすることです。

課題

引用:我が国企業の脱炭素化に向けた取組状況―アンケート調査の分析結果の概要―

内閣府が2022年3月に行った企業向けの調査によると、7割以上の上場企業が気候変動リスクを把握したり、排出削減目標の設定を試みたりしていますが、実際に計画を実行できているのは43.2%という結果になっています。

また、非上場企業の75.1%は脱炭素化、つまりゼロエミッションへの取り組みができていないのが現状です。できない理由の多くはノウハウ・人員不足、投資・運営コスト増への対応の難しさとされており、これらがゼロエミッションの浸透を拒む大きな課題となっています。

その他、技術面の問題では、廃棄物を再利用するときに大量のエネルギーが必要になることが挙げられます。

これらのことから、2050年の世界共通目標の達成に向けては、企業への浸透度を深めるためのリソース不足問題の解決や、廃棄物の再利用を省エネルギーで実現するリサイクルの質向上などがカギを握っているといえるでしょう。

廃プラスチックのリサイクル方法は?再利用すると何になる?>>

 

ゼロエミッションの実現に向けてできること

ゼロエミッションの実現に向け、企業が日常的に取り組めることを紹介します。

 

廃棄物の排出量を減らすための取り組み
  • ・原材料を無駄なく使い切る
  • ・製品の軽量化・軽包装化に取り組む
  • ・耐久性に優れ、長く使える製品を提供する
廃棄物を再利用するための取り組み
  • ・不要になった機器を別の拠点で利用する
  • ・他社に買い取ってもらう
廃棄物を再資源化するための取り組み
  • ・びん・缶などの資源ごみを回収して再加工する
  • ・生ゴミをバイオマス発電のエネルギー源にする
  • ・ゴミ焼却施設の熱源を温水プールなどに活用する

先の見出しで挙げたとおり、なかでも廃棄物の再資源化によるゼロエミッションへの貢献度合いは高いです。自社での再資源化が難しい場合には、廃棄物の適切な回収および再資源化に取り組む業者へ依頼するのも効果的でしょう。

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まとめ

ゼロエミッションとは廃棄物の排出をゼロにする取り組みで、国や自治体、企業によるさまざまな実践事例が確認できます。現状では、温室効果ガス排出量は減少傾向にありますが、特に中小企業ではリソース不足などの課題も残っています。

廃棄物の排出量削減や再利用・再資源化への取り組みを通じて、私たち一人ひとりもゼロエミッションの実現に貢献していきましょう。

静岡県内にある環境のミカタの工場では、太陽光発電やFIT電力の使用、非化石証書の購入によりCO2フリーを実現。廃棄物の処理もCO2フリーで行っています。ゼロエミッションの実現に向け、自社でも取り組もうと検討中の企業は、ぜひ弊社までご相談ください。

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