これまで処理コストの重荷となっていたカーボン系廃棄物が、近年、「新たな炭素源」として注目されていることをご存知でしょうか。
技術の進歩により、焼却や埋立が中心だった廃棄物が、製鋼副資材や新たな素材へと生まれ変わるルートが確立されつつあります。
本記事では、カーボン(炭素)系廃棄物の基礎知識から、種類ごとのリサイクル可能性、そして資源化のメリットまでを分かりやすく解説します。
目次
カーボン系廃棄物とは?炭素を含む廃棄物の基礎
カーボン系廃棄物とは、炭素(カーボン)を主成分または主要な構成成分とする素材から生じる廃棄物の総称です。その代表例としては、次のようなものが挙げられます。
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・炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
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・活性炭
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・黒鉛材料の切粉・粉じん
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・炉内の炭化残渣
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・各種スラッジなど
これらの廃棄物は従来、焼却・埋立処分されることが大半でしたが、昨今の脱炭素社会への動きや資源循環技術の発展に伴い、「炭素源」としての価値が見直されつつあります。
炭素は元来エネルギーや素材として幅広く利用されるため、廃棄物中の炭素を循環させる視点は今後さらに重要性が高まるでしょう。
カーボン系廃棄物の主な種類と特徴
一口に「カーボン系廃棄物」と言っても、その性質や発生工程はさまざまです。ここでは、代表的な4つのカテゴリーについて、その特徴とリサイクルの現状を掘り下げていきます。
CFRP(炭素繊維)廃棄物
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、航空機や自動車、スポーツ用品など、軽量かつ高強度が求められる分野での採用が急増しています。
その一方で、CFRPは熱硬化性樹脂と炭素繊維が強固に複合化されているため、一度成形すると分離が難しく、従来は埋立や焼却に頼らざるを得ませんでした。
しかし、近年では、熱分解法や溶剤法といった技術の進展により、樹脂を分解して炭素繊維を取り出すことが可能になりつつあります。
CFRPリサイクルは難しい?現状や活用されている技術を解説 >>
活性炭・カーボンフィルター類
工場の排ガス処理や排水処理、脱臭設備などで活躍する活性炭も、カーボン系廃棄物の代表格です。これらは定期的な交換が必要で、使用済みになると大量に排出されます。しかし、汚染物質を吸着した後でも、活性炭そのものは高い炭素含有率を維持しているのが特徴です。
そのため、熱再生によって吸着能力を回復させたり、別の用途での炭素源として再利用したりすることが可能です。国際的にも貴重な資源循環の対象として扱われています。
カーボン粉じん・スラッジ・炭化残渣
金属加工時の研磨粉、黒鉛電極・黒鉛部材の切粉、鋳造・精錬炉の炭化残渣といった製造現場で、副次的に発生する産業廃棄物にも、カーボンが含まれています。
なかでも黒鉛系の粉じんは炭素含有量が非常に高く、良質な炭素源として活用できる可能性があります。ただし、油分、金属成分、薬品などが混入しているケースも多いため、そのままでは資源化できません。事前の成分分析によって、どのような処理を行えば再利用できるかを見極めることが不可欠です。
カーボン系廃棄物を資源化するメリット
カーボン系廃棄物の資源化は、単なる環境配慮にとどまらず、企業活動におけるコスト管理や調達戦略、さらにはESG対応にも関わる重要な取り組みです。
ここでは、カーボン系廃棄物を資源化することで得られる主なメリットとして、以下の3点を紹介します。
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・廃棄コストの最適化につながる
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・調達リスクを抑制できる
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・CO2排出削減やESG対応に貢献する
それぞれ見ていきましょう。
廃棄コストの最適化につながる
カーボン系廃棄物の資源化による最大のメリットは、廃棄コストの削減です。
産業廃棄物の最終処分場は、残余年数が約20年程度とされており、受け入れ余力の低下に伴って処理費用が上昇しやすい状況が続いています。
こうした背景から、産業廃棄物を単に焼却・埋立処分するのではなく、資源化ルートに乗せることは、長期的なコスト最適化につながります。特に、重量がある廃棄物や、コンスタントに大量排出される廃棄物ほど、資源化によるスケールメリットを得やすく、処理費用の抑制効果が大きくなる傾向にあります。
調達リスクを抑制できる
廃棄物を資源として活用することは、調達の安定化にも寄与します。黒鉛やコークスなどの炭素原料は、海外情勢や為替の影響を受けやすく、価格変動リスクが常に付きまといます。
自社や国内で発生した廃棄物由来の炭素を利用できれば、輸入材への依存度を下げることが可能です。結果として、原料の調達から利用までを国内で完結しやすくなり、外部環境の変化に左右されにくい調達体制(サプライチェーン)の構築につながります。
CO2排出削減やESG対応に貢献する
廃棄物を焼却せずに資源化することで、焼却時に発生するCO₂を直接的に削減できます。これは、環境保全を重視するESG経営においても、大きなメリットです。
また、新規炭素材の使用量を抑えられるため、製品のライフサイクル全体における環境負荷の低減にもつながります。こうした取り組みは、単なる廃棄物対策にとどまらず、企業が中長期的に取り組むべきカーボンニュートラル実現に向けた具体策の一つと位置づけられるでしょう。
カーボンニュートラルの考え方や、企業に求められる対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
カーボンニュートラルとは?目的や目標、日本と世界の取り組みを解説>>
資源化を進める際の注意点と事前確認項目
メリットの多いカーボンリサイクルですが、どんな廃棄物でもすぐに資源化できるわけではありません。 トラブルを防ぎ、確実にリサイクルを進めるために確認すべき3つのポイントをご紹介します。
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・炭素含有率・灰分などの品質評価(資源化可否の判断)
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・付着物(油分・薬品・金属粉)による影響の確認
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・適正処理とトレーサビリティの確保
一つずつ、詳しく解説します。
炭素含有率・灰分などの品質評価(資源化可否の判断)
まず重要なのが、「炭素がどれくらい含まれているか」の確認です。 カーボン系廃棄物は素材によって炭素の含有量は大きく異なります。また、燃え残る「灰分」や、揮発する成分が多すぎると、受け入れ先の設備トラブルの原因となるため、炭素源として利用できない場合があります。
そのため、TGA(熱重量分析)や灰分測定など、資源化を前提とした専門的な分析を行う必要があります。
付着物(油分・薬品・金属粉)による影響の確認
次に、不純物のチェックです。 炭素素材は吸着性が強いため、製造工程で油分や薬品、金属粉などの異物が付着しやすくなっています。
これらの付着物は、再生品の品質を下げるだけでなく、処理工程での安全性にも関わります。再利用する用途(製鋼用、燃料用など)によって許容される基準が変わるため、事前の詳細なヒアリングとサンプル確認が欠かせません。
適正処理とトレーサビリティの確保
最後に、法的なコンプライアンスの遵守です。リサイクルする場合であっても、廃棄物処理法に基づく排出事業者責任は免除されません。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)による管理はもちろん、委託する事業者が適切な許可を有しているか、最終的にどのような形で利用されるかを把握しておくことが大切です。トレーサビリティ(追跡可能性)を確保することは、適正処理を担保し、企業の信頼性を維持するうえで欠かせない要素となります。
2026年2月稼働予定の新工場とカーボン資源化
カーボン系廃棄物のリサイクル需要の高まりを受け、2026年2月に私たちの新工場が稼働予定となっています。
新工場では、CFRPだけでなく、活性炭、炭化残渣、燃えがら、ばいじんなど、多種多様なカーボン系廃棄物の受け入れが可能です。
廃棄物の特性に応じて破砕・選別・調整を行い、製鋼副資材として利用可能な「高品位な炭素源」へとリサイクルするという流れです。
環境のミカタでは、既に優良産廃処理業者認定やISO27001(情報セキュリティ)なども取得しており、廃棄物の適正処理体制に加え、情報管理面でも高い水準を維持しています。新工場では、適切な廃棄物処理方法の選定、最終的な資源化用途の判断までを一貫して行う体制を整えており、廃棄物の性状に応じた最適なリサイクルルートを提案できます。
カーボン含有廃棄物の処理方法や資源化の可否について検討段階のものがあれば、まずはご相談ください。
まとめ
カーボン系廃棄物は、従来は焼却・埋立処分が中心でしたが、技術の進展により再資源化の選択肢が広がっています。なかでも、活性炭、粉じん・炭化残渣などは炭素含有率が高く、資源としての活用が見込まれる廃棄物であることが分かっています。
廃棄コストの抑制やCO2排出削減など、企業にとって得られるメリットは小さくありません。
環境のミカタでは、2026年2月の新工場稼働により、これらカーボン系廃棄物の循環利用に向けた体制をさらに強化していく予定です。カーボン系廃棄物の処理方法を見直したい場合や、資源化を前提とした処理フローについて具体的に検討したい場合は、お気軽にお問い合わせください。