店舗の開業を考えている場合、やることも多いため何から手を付けたらいいのかわからない、という方も多いでしょう。また、開業前にしっかりした準備や計画を立てていなければ、開店後の経営に影響を及ぼすこともあります。
しかし、店舗開業までの流れを整理し計画を立て、一つひとつ丁寧にクリアしていけば開業は可能です。まずは何から取り組むのか、開業までの流れを整理しておきましょう。
店舗にはさまざまな業態がありますが、今回は飲食店を例に店舗開業のフローをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
店舗開業までの大まかな流れ
店舗開業までの流れを11のステップごとにご紹介します。あくまでも概要になるため、具体的にやるべきことは箇条書きでメモに残し、終わったら消していくなどして進めるようにしましょう。
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①コンセプトの決定
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②市場調査・商圏調査の実施
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③店舗物件の選定と立地調査
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④資金調達と事業計画書の作成
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⑤店舗の内外装の設計
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⑥商品調達やメニュー開発
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⑦開業の許認可や届出の提出
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⑧廃棄物処理の確認
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⑨従業員の募集・採用
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⑩オペレーションを決める・プレオープン
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⑪開業
ステップ①コンセプトの決定
コンセプトとは、事業全体を貫く基本的な考え方や方針のことです。コンセプトは、物件探しやメニュー開発などに影響を与えるため、開業準備には欠かせません。開業後の経営や運営の軸にもなるため、あらかじめしっかり作り込んでおく必要があります。
また、コンセプトは金融機関から融資を受ける際に提出する事業計画書の作成で必要になります。ステップ④の事業計画書にも紐づきますが、コンセプトを明確に提示できなければ、経営の見通しが甘いと判断され、融資を断られてしまう可能性もあります。
ステップ②市場調査・商圏調査の実施
市場調査とは、開業したい地域や物件、最寄り駅などの通行量を調べることです。商圏調査とは、開業予定地域の交通量や人口統計データ、競合店の有無、交通状況など地域の環境や特性を調べることを指し、調査は自分で対応するほか、調査会社に依頼することもできます。
これらの調査は店舗運営のリスクを減らし、開業予定地域が収益をあげやすい場所かどうかを確認する目的でおこないます。調査結果を事業計画書に盛り込むことで、金融機関からの評価も良くなる可能性があります。
ステップ③店舗物件の選定と立地調査
立地と物件は、お客様をたくさん呼べるかどうかに関わる大切なポイントです。しかし、人が集まる良い立地の賃料は高いため、利益を圧迫する可能性があります。
予想客単価や予想来店数から、どのくらいの収益が見込めるか、シミュレーションをするなどして慎重に検討しましょう。
また、物件は不動産会社だけではなく、内装を請け負う施工業者と一緒に選ぶ方法がおすすめです。イメージに沿った内装工事が可能かどうかを内見の際に判断してもらえ、仮押さえの対応が簡単になります。
ステップ④資金調達と事業計画書の作成
開業資金の調達をするために、金融機関から融資を受ける方法を考えている方は多いでしょう。前述でも触れましたが、金融機関から資金調達する際に必要なものは、事業計画書です。
事業計画書とは、事業の内容と収支予測をまとめた経営プランのことで、必要な融資額の根拠になります。収支予測のなかに返済計画も盛り込みます。金融機関によっては、事業計画書のテンプレートが用意されていることもあるので、利用するとよいでしょう。
ステップ⑤店舗の内外装の設計
店舗が決まったら、内外装の設計を施工業者に依頼します。施工業者には、まず基本設計で間取りや電気の配線、空調、使用する素材などを決め、図面に起こしてもらいます。
基本設計の時点で、コンセプトに従って壁床の素材や照明、テーブルなどの什器の配置を決めておく必要があります。看板のデザインやお店のロゴが必要なら、事前に看板制作業者やデザイナーに依頼しておくとよいでしょう。
また、廃棄物の保管場所も確認しておきましょう。どの程度のゴミの量が出るか、やや想定しにくい場合は、施工会社の方にも相談してみるのも一つの選択肢です。そして、実施設計で設備の工事内容や作業の順などを決め、工事に取りかかります。
ステップ⑥商品調達やメニュー開発
内外装の工事期間中に、商品調達とメニュー開発を進めましょう。
飲食店の場合は食材や資材、食器、カトラリーなどの仕入れ先を探しておく必要があります。テイクアウトを考えているなら、包装用資材の仕入れ先の検討も必要です。
そして、メニューはコンセプトにあった内容を考えます。価格は、周辺の飲食店やライバル店の価格相場を考慮にいれて決めるとよいでしょう。
ステップ⑦開業の許認可や届出の提出
業種によっては、特定の資格や届け出がなければ開業できないことがあります。必要な資格や許可の取得にかかる時間と費用を確認し、早めに準備しましょう。
飲食業の場合には、以下のような届け出の手続きが必要になります。
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・食品衛生責任者、食品営業許可(保健所)
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・菓子製造業許可(保健所)
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・防火管理者選任届(消防署)
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・火を使用する設備等の設置届(消防署)
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・深夜における酒類提供飲食営業開始届出(警察署)、など
ステップ⑧廃棄物処理の確認
飲食店に限らず事業活動で発生したゴミは、家庭ゴミのように地域の集積所に捨てることができません。事業活動で発生したゴミは、事業系一般廃棄物と産業廃棄物に分類され、事業主の責任において、それぞれ適切に処理するよう義務付けられています。
廃棄物回収業者へ委託するつもりの方でも、忙しくて相談するのを忘れてしまい、開店直前にバタバタと依頼されるケースも少なくありません。廃棄物回収業者へ委託を考えているなら、店舗の内外装が終わる頃までに相談しておくとよいでしょう。
ステップ⑨従業員の募集・採用
人を雇う予定があれば採用活動が必要です。採用活動は、求人サイトや求人誌に掲載を依頼したり、店頭に紙を貼ったりして人を募集します。募集をかけてもすぐに集まるとは限らないため、時間に余裕を持って募集をかけましょう。
募集要項を作成する前に、店舗でのスタッフの作業内容を決めます。採用のミスマッチを減らすためにも、欲しい人材像やスキルは明確にしておきましょう。開業までに期間があるなら、スタッフのトレーニング期間を設けるのも一つの方法です。
ステップ⑩オペレーションを決める・プレオープン
店舗運営のオペレーションを決め、以下の項目を参考にマニュアルを作っておきましょう。
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・伝票管理
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・接客マニュアル
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・決済手段(現金・キャッシュレス決済など)別の対応方法
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・レジ締めの仕方
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・ゴミの捨て方
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・スタッフのシフト作成
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・給与計算方法の決定
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・備品管理・発注
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・機器メンテナンス、などな
プレオープンをする場合、1日目は知人や友人、2日目は近隣の方などのように、限定して招待します。プレオープンが終わったらオペレーションの課題を洗い出し、グランドオープンまでに課題をつぶしておきましょう。
ステップ⑪開業
開店日を目前にしたら告知や宣伝、メディアリリースをします。SNSやインターネットからの集客を考えるなら、ホームページ制作やSNSアカウントの開設をおこなっておく必要があります。
開業したら管轄の税務署への届け出が必要です。個人なら「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と、税金面で有利な特典のある「所得税の青色申告承認申請書」を一緒に提出しておきましょう。
法人を設立する場合は「法人設立届出書」を税務署に提出しますが、その他にもさまざまな手続きや費用負担が必要になります。あらかじめ準備しておきましょう。
店舗開業を成功させるために重要なポイント
店舗開業までのステップはいろいろとありましたが、そのなかでも成功させるために重要な5つのポイントを解説します。
店舗のコンセプトの考え方
飲食店のコンセプトを作るには、提供する商品やサービス、ターゲット層などについて5W1Hを使って考えるとよいでしょう。例として、ハンバーグ店を開く場合のコンセプトを考えてみます。
【5W1Hのイメージ例】
誰に・who | 家族連れが |
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何を・what | 牛肉100%のハンバーグを |
いつ・when | ランチタイムに |
どこで・where | ゆったり座れる広い空間で |
どのように、どのような・how | できたてをゆっくり食べられるお店 |
コンセプトはできる限り深掘りし、お客さんが飲食店に来店したい、また来たいと感じる理由を考えてみましょう。
市場調査
お店のコンセプトが、ターゲットのニーズとマッチしていなければ、経営を継続することができません。市場調査には定量調査・定性調査の2つがあり、それぞれの手法から出店予定地域のデータを収集し分析する必要があります。
定量調査では、数値化されたデータをもとに市場動向を分析し、市場の傾向を把握するために利用します。定性調査は、数値化できない感情や行動の理由をインタビューなどで集める調査手法です。店舗への要望など、意見を収集する目的で行います。
収集した双方のデータを活用することで、ニーズの理解や分析を深めることができるでしょう。
店舗物件の選定
開業にあたって理想の物件に出会えず、物件選びに苦労する人が多いのが現状です。物件探しでは事前にコンセプトをもとに条件を洗い出し、優先順位をつけて妥協する点としない点を明確にしておくとよいでしょう。
物件探しのポイントとなるのは以下の4つです。
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・賃料
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・場所(最寄り駅・徒歩所要時間)
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・面積
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・階数
また物件には、内装設備のある居抜き物件と、内装設備のないスケルトン物件があります。どちらを選ぶかによって内装費用が大きく左右されるので、あらかじめ考慮しておきましょう。
資金調達
開業資金を調達する方法には、以下のものがあります。開業には少なくとも1,000~1,500万円程度の費用が必要と言われており、金融機関の融資を利用することが多いです。
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・自己資金から捻出する
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・家族や親戚から借りる
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・銀行や信用金庫に融資してもらう
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・日本政策金融公庫に融資してもらう
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・クラウドファンディングを利用する
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・補助金や助成金、給付金を利用する
金融機関によっては、自己資金の要件を設けているところがあります。例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、以下の自己資金が必要です。
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創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
自己資金のない方は融資が通らない可能性があるので、不安な方は事前に専門家や窓口に問い合わせてみてください。
廃棄物処理
上述のとおり事業活動で発生したゴミは、事業主の責任において適切に処理することが義務付けられています。
とくに産業廃棄物は保管基準が定められており、囲いや掲示板を設置したり、飛散・悪臭発散の防止したりといった対応が必要です。例として、フレコンバックやコンテナなどを活用して保管する方法があります。
保管基準に違反してしまうと、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されるため、ルールに従って管理・処理しましょう。
店舗開業まとめ
飲食店の店舗開業までの流れをご紹介しました。開業までにやることや必要なものはたくさんありますが、希望の日時に開業できるよう事前にしっかり計画を立てて進めていきましょう。
なかでも廃棄物の処理の委託は、うっかり忘れてしまいやすいものの一つです。開業後はどのような事業でも、適切にゴミ処分を行わなければならないため、早めのご相談をおすすめします。
環境のミカタでは、店舗開業の際の廃棄物回収も行なっております。店舗形態や営業日に合わせ、回収についてご提案させていただきますので、ぜひご相談ください。