
汚泥は産業廃棄物の一つで、適切に処理を行わなければ危険な廃棄物です。正しく安全に処理するには、汚泥について理解したうえで適切な処理方法を知る必要があります。
今回は汚泥の種類や産廃処理方法、処理する際の注意点を解説します。困った場合は専門業者に相談してみましょう。
目次
産業廃棄物の汚泥とは
汚泥は産業廃棄物処理法で定められている産業廃棄物の一つで、事業活動によって発生した泥状の廃棄物を指します。なかには重金属を含むような有毒性が強いものもあり、取り扱いには注意が必要です。
例えば、PCB(ポリ塩化ビフェニル:焼却処分時にダイオキシンを発生させる物質)が染みこんだ汚泥は、爆発性・毒性・感染性により健康・生活上の被害を与えるおそれがあるとされる「特別管理産業廃棄物」に該当します。
また汚泥であっても、し尿を含むビルピット汚泥や家庭からの排水処理によって生じる汚泥は、産業廃棄物ではなく一般廃棄物として扱われます。
汚泥の種類
概要 | 主な排出事業者 | |
有機汚泥 | 下水や食品廃棄物など有機物を多く含む汚泥 | ・下水処理場 ・食品工場 ・製紙工場 など |
無機汚泥 | 砂や金属などの無機物を多く含む汚泥 | ・建設現場 ・金属工場 ・土木工事現場 など |
汚泥には「有機汚泥」と「無機汚泥」の2種類があり、種類によって取扱業者が違うこともあります。法律上は2つの汚泥を明確に区別する基準がないため、迷った場合は業者や行政に問い合わせましょう。
有機汚泥
有機汚泥は、下水や食品廃棄物、動物の死がいなどの有機物を多く含んだ汚泥のことです。主に、下水処理場や食品工場、製紙工場などで排出されます。有機物とは炭素(C)を含む化合物のことで、「燃やすと二酸化炭素が生じるもの」をイメージするとわかりやすいでしょう。
本来、有機物を含む排水は水中の微生物によって分解されます。しかし有機物が多すぎる場合には分解しきれず、有機汚泥となります。
代表的なものは、以下のとおりです。
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・活性汚泥法による処理後の汚泥
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・パルプ廃液から生じる汚泥
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・動植物性原料を使用する各種製造業の廃水処理後に生じる汚泥
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・ビルピット汚泥(し尿を含まないもの)
有機汚泥は資源となる潜在力があり、適切な処理を行うことで再資源化の可能性が広がります。
無機汚泥
無機汚泥は、砂や金属などの無機物を含む排水の処理施設や設備で発生します。有機物が炭素を含む化合物である一方、無機物は基本的に炭素を含みません。建設現場のほか、ガラスや陶器、メッキなどの加工を請け負う工場等で排出されます。
代表的なものは、以下のとおりです。
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・赤泥
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・けい藻土かす
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・炭酸カルシウムかす
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・廃白土
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・浄水場の沈でん池より生じる汚泥
ただし、地山掘削で生じる掘削物や浚渫土(しゅんせつど)は、土砂および土砂に準じるため、廃棄物処理法の対象外となります。
産業廃棄物に占める汚泥の割合
環境省の令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書によると、産業廃棄物のなかで「汚泥」の占める割合は最も高く42.0%にのぼります。
次に割合の多い「動物のふん尿」と比較すると、比率・排出量ともに約2倍であり、汚泥の排出量の多さが伺えます。
先述のとおり汚泥には有機汚泥、無機汚泥の2種類があり、それぞれ幅広い業種によって排出されるため、廃棄物のなかで最も多い排出量となっているのです。

画像出典:令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)
汚泥の産廃処理方法
汚泥の処理方法にはいくつかの種類があります。今回は8つの方法を見ていきましょう。
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・焼却
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・セメント原料化
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・埋め立て
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・堆肥化
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・メタン発酵
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・造粒固化
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・溶融
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・油水分離
焼却
焼却は、汚泥を脱水して乾燥させてから焼却炉で燃やす方法です。メリットは減量化できることですが、煤塵(ばいじん)や燃えがらなど、焼却時に生じる二次廃棄物の処理方法を確認しておくことが大切です。
また、焼却時に発生する熱はエネルギーとして利用できます。
セメント原料化
汚泥の焼却で出る灰は、セメントの主原料と成分が似ており、粘土の代替として活用できます。無駄なく再利用できるため、エコな処理方法です。
埋め立て
リサイクルや減量化ができない場合は埋め立てることになります。最終処分場は廃棄物の種類に応じて、以下の3つに分かれています。
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・安定型処分場
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・遮断型処分場
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・管理型処分場
汚泥は、管理型処分場で埋立処分されるのが一般的です。
堆肥化
脱水処理を行った有機汚泥を、人為的に発酵させて肥料にすることを堆肥化と呼びます。具体的には、食品工場や下水処理場などの有機汚泥を発酵させて堆肥原料にする方法です。
農地での活用が推進されており、環境負荷の軽減とともに昨今では、肥料原料の輸入価格高騰への解決策としても期待されています。
メタン発酵
汚泥を微生物の働きによって分解し、バイオガスを発生させ、発電に利用してエネルギーとして活用する方法です。発酵後の残渣(ざんさ:残りかす)は、肥料や燃料に活用できます。
造粒固化
薬剤や機械を使って無機汚泥を固めて処理する方法を造粒固化と呼びます。リサイクル処理土や骨材として再利用できるシステムです。
建設現場や工場等で生じた汚泥を再資源化することで、循環型社会推進の後押しが期待されています。
溶融
汚泥に溶解温度を超える熱を加えて減容化し、含有成分の抽出と無害化を行う方法です。溶解することによって、有機物は燃焼し、無機物は「溶融スラグ」と呼ばれるサラサラしたガラス状の物質に変化します。
この溶解スラグはコンクリート資材や道路の路盤材など、土木資材への活用が進んでいます。
油水分離
鉱物潤滑油系汚泥に加熱や遠心分離を施し、油分と水分を分離させる方法です。油は再生油として活用できます。
産廃処理における汚泥の重量の考え方
汚泥の産廃処理費用は、汚泥の脱水・乾燥などの処理費や収集運搬費などで構成されています。処分量に応じて算出されますが、汚泥の質量を量るのは難しいです。そのため「比重」という考え方が用いられます。
廃棄物の種類に応じた換算係数(t/㎥)に体積をかけ、重さを求め比重換算する方法です。
例えば、汚泥2㎥の場合は、重量換算係数である1.10×2㎥=2.2トンとなります。
産業廃棄物の分類 | 重量換算係数(t/㎥) |
汚泥 | 1.10 |
燃え殻 | 1.14 |
廃油 | 0.90 |
廃酸 | 1.25 |
廃アルカリ | 1.13 |
廃プラスチック類 | 0.35 |
紙くず | 0.30 |
木くず | 0.55 |
質量は、基本的に上記の計算方法をもとに算出できますが、汚泥の状況によって実際の数値は変わることがあります。汚泥の重量・処理費用を正確に把握したい場合や、重量の測定が難しい産業廃棄物に関しては、専門業者にお問い合わせください。
環境のミカタでは、バキューム車による汚泥の収集運搬を行っており、重量測定も対応可能です。静岡県の事業者様で、汚泥の処分にお困りであればぜひご相談ください。
産業廃棄物として汚泥を処理する際の注意点
汚泥は、最終処分方法まで確認できないと産業廃棄物処理法に反しているとみなされます。場合によっては措置命令などを受ける可能性もあるため注意が必要です。
許可業者に依頼する
汚泥の処理は、都道府県知事より産業廃棄物処理業や産業廃棄物収集運搬業の許可を得ている業者しか行えません。また、取扱許可品目に「汚泥」が含まれているかも重要なポイントです。
依頼する際は、汚泥処理の認可を受けている専門業者を選びましょう。
不法投棄しない
汚泥を敷地内等に埋めるのは不法投棄とみなされるため、罰則が科される恐れがあります。
実際2023年に、生コンクリート工場で排出された汚泥(コンクリートスラッジ)を適正に処分せず、工場敷地内に堆積していた件で、兵庫県が産業廃棄物の不法投棄事案として事業者を指導しました。
ほかにも、2021年に静岡県熱海市で起きた土石流災害では、建設残土でずさんに造成された盛り土が大雨によって崩落して被害を大きくしたといわれています。
2023年には再発を防ぐ目的で、盛土規制法が施行されました。悪質な事業者に対しては、行政処分を出して対応を促す内容も盛り込まれています。
このように、汚泥を含む産業廃棄物の処理は法令に則って行わなければいけません。不本意な罰則を避け、人的被害を招かないよう、適切な許可を得た業者に依頼することが推奨されます。
まとめ
産業廃棄物の汚泥は有機汚泥と無機汚泥の2種類があり、産業廃棄物のなかで最も排出量が多いのが特徴です。しかし処理は複雑で、地域によってルールが違うこともあります。罰則を受けず、適切な処理を行うためには、許可を得た業者への依頼が不可欠です。
環境のミカタではバキューム車を所有しており、汚泥の収集運搬が可能です。また、汚泥の処理だけでなく、幅広い品目の産業廃棄物の中間処理や処分、収集運搬なども総合的に対応しています。産業廃棄物を処分する際は、ぜひ環境のミカタにご相談ください。
