近年、企業の社会的責任(CSR)の観点から、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが注目されています。SDGsは、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから構成される国際的な取り決めです。
本記事では、企業がSDGsに取り組むべき理由やその具体的な方法、メリットについて詳しく解説します。自社の事業とSDGsをどのように結びつければ良いのか知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
企業にSDGsへの取り組みが求められている背景
出典:持続可能な開発目標
SDGsは、国連に加盟するすべての国が持続可能な世界を実現するために取り組むべき目標です。SDGsは17の目標と、それに基づいた169のターゲットから構成されています。これらの目標は、貧困や飢餓の撲滅から気候変動対策、平和で公正な社会の実現まで、幅広い分野をカバーしています。
SDGsの前身として、2000年から2015年まで「MDGs」が存在していました。MDGsは主に途上国の開発問題解決を目的としたため、主体となって取り組んだのは国や自治体、行政機関などです。しかし、この取り組みでは先進国や企業単位での当事者意識を引き出すことが難しく、課題となっていました。
この反省を踏まえて策定されたのが、SDGsです。SDGsは、経済・環境・社会の3つの側面を踏まえ、先進国および発展途上国も含めた世界全体の共通目標として設定されました。 SDGsの実施は各国政府の判断に委ねられていますが、実現のためには企業の積極的な取り組みが必要不可欠です。
例えば、「産業と技術革新の基盤をつくろう」「働きがいも経済成長も」といった経済に関する目標は、企業の成長なくしては達成し得ません。一方で、経済活動が活発化すれば発生する二酸化炭素量は増加しやすく、地球温暖化や異常気象などの環境課題にも影響を与えます。
さらに、環境問題の深刻化は、第一次産業における収穫量の減少や品質の低下につながり、「飢餓をゼロに」「人や国の不平等をなくそう」などの社会課題にも影響を及ぼしがちです。
SDGsの各目標は密接な関係にあり、企業はその影響力の大きさから、民間部門のリーダーとしてSDGsの実現に向けて取り組むことが求められています。また、イノベーション力や事業創出力を活かし、SDGsの目標達成に向けた貢献が期待されています。
このように、世界全体としてSDGsを実現するためには、企業の積極的な参画が欠かせません。 SDGsへの取り組みは、もはや企業の社会的責任(CSR)の範疇を超え、事業戦略の中核に位置づけられるべき重要な課題となっています。
企業におけるSDGsの取り組み状況・内容
SDGsについて、企業の取り組み状況の実態や、具体的な取り組み内容を紹介します。
企業の取り組みの状況
帝国データバンクが2023年に実施したSDGsに関する企業の意識調査によると、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業が27.4%、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」が26.2%となっており、SDGsへの取り組みについて積極的な姿勢をとっている企業は合計53.6%でした。
この層は、2020年以降拡大傾向にあり、SDGsの考えが社会全体に浸透していることが伺えます。
一方、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」は34.6%、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は7.2%、合計41.8%であり、半数近くの企業がSDGsに向けて具体的な行動を起こせていない現状も明らかになっています。
また、企業規模によっても、SDGsへの取り組みに差が見られる状況です。 大企業ではSDGsに積極的な企業が71.6%を占めるのに対し、中小企業では50.4%、そのうち小規模企業では42.8%と、企業規模が小さくなるほどSDGsへの取り組みが進んでいない傾向が見られます。
こうした背景には、SDGsへの取り組みには社内的な制度や体制構築が必要であるとともに、そのためのコストや時間がかかることなどがあると考えられます。 実際に、「小さな企業ではSDGsに向けた費用の確保や人材育成に限界がある」「取り組むにも何から始めればよいかわからない」といった声も挙がっている状態です。
企業の具体的な取り組み内容
昨今の地球温暖化対策として、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素」が注目されています。 日本政府は2050年までの達成を目標として宣言しており、これを受けて多くの企業が「脱炭素」に向けた取り組みを始めています。 例えば、電力の再生可能エネルギー化や電気自動車の導入などが、具体的な取り組みの一つです。
また、当社環境のミカタでは、CO2フリーに向けた対策の一環として、バイオマス発電をはじめとするエコエネルギーの活用を推進しています。お客様より排出される食品廃棄物を利用したバイオマス発電など、FIT電力を自社工場の電力として活用。そのFIT電力で賄えない部分を非化石証書の購入によって補完することで、実質的に工場高圧電力CO2フリーを実現しています。
2026年までにグループ会社を含む全電力を再生可能エネルギーで供給することを目標に掲げ、日々取り組んでいます。
環境のミカタは「再エネ100宣言RE Action」に参加しています
企業がSDGsに取り組むメリット
SDGsへの取り組みは、単なる社会貢献活動ではありません。 企業にとってさまざまなメリットがあり、長期的な成長戦略の一環として位置づけられるべきものです。
ここでは、企業がSDGsに取り組むことで得られる主なメリットについて、詳しく解説していきます。
企業イメージの向上が期待できる
SDGsへの取り組みをアピールすることで、企業イメージの向上が期待できます。 世間的なSDGs意識の浸透とともに、SDGsへの取り組み度合いで企業を評価する人も少なくありません。
そこでSDGsへの活動実績をアピールすれば、社会問題や環境問題に対して積極的に取り組んでいる企業として認知され、自社商品の売上アップや顧客層の拡大が見込めます。
さらに、就職活動中の学生や転職を検討中の方からも興味を持たれやすくなり、より多様かつ優秀な人材確保につながる可能性もあります。
将来的なニーズを満たす事業展開・経営悪化リスクの軽減が実現できる
SDGsは、政府や自治体だけでなく、企業にとっても取り組むべき重要な課題とされています。そのため、長期的な視点で社会のニーズを満たす経営は、企業の成長を後押しします。
2017年には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、環境問題や社会問題に配慮した事業展開が将来的なメリットをもたらすと判断し、ESG投資に1兆円規模の資金を投入することを決めました。
こうした背景を鑑みても、今後ますます社会問題や環境問題の解決への貢献が、企業価値の向上につながると考えられます。他社との差別化や付加価値の創出という観点からも、早期に取り組むことが企業の成長に寄与するでしょう。結果的に、将来的な経営悪化のリスク軽減にもつながります。
また、SDGsでは社会・環境の課題を包括的に網羅しているため、SDGsを通して社会の抱える問題や潜在的なリスクの理解を深めることで、新たなビジネスチャンスにつなげられる可能性があります。
ビジネスチャンスの獲得につながるネットワークを構築できる
SDGsに対して取り組むことは、新たなビジネスチャンスの獲得につながります。
SDGsの実現に向けて活動する際には、社内だけでなく他社や行政機関、さらにはNPOやNGOなど、さまざまな団体と接点を持つのが一般的です。
そうした場合、利益追求を目的とした活動では成し得なかった業界や人材とのパートナーシップや、かつてないイノベーションに結びつく可能性があります。 このような活動を継続していけば、新規のビジネスチャンスの獲得につながり、さらなる企業成長が期待できます。
また、社会課題の解決を目指すなかで、これまでにない市場ニーズを発見し、新たな製品やサービスを生み出すこともあるでしょう。
出資を受けやすくなることで持続的な企業成長につながる
SDGsへの取り組みは、企業の生存戦略にも直結します。近年では、生活の多様化やテクノロジーの進歩により、企業を取り巻く市場環境は目まぐるしく変化しています。
また、グローバル市場においては新興国の成長もあり、企業の生存競争は激化している状況です。このような環境下では、SDGsへの積極的な取り組みが、他社との差別化要因となり得ます。
特に、金融機関や投資家では、企業がSDGsに対して取り組んでいるかどうかを、出資判断の基準とするケースも少なくありません。SDGsの実現に向けて積極的な活動を行えば、ステークホルダーからの資金調達が容易になり、市場における競争力向上、ひいては持続的な企業成長につながると期待できます。
つまり、SDGsへの取り組みは、単なる社会貢献活動ではなく、企業の長期的な成長戦略の一環としてとらえるべきものといえます。
企業がSDGsに取り組む流れ
企業におけるSDGsの導入指針として「SDG Compass」があります。 SDG Compassは、企業のSDGsの導入および経営戦略との統合から、その測定、管理についての適切な手法を目的に策定されました。
この考え方に基づいて、企業がSDGsを導入する方法について解説します。
1.SDGsへの理解を深める
SDGsへ取り組む際は、まずSDGsへの理解から始めます。 このとき、疑問や違和感がある場合にはしっかりと解決し、社内で認識にずれが生じないようにすることが重要です。
メンバーが共通認識を持つことで、SDGsへの取り組みに関する当事者意識を深められ、自社の持続的な成長にとっても効果的な進行が可能となります。
例えば、社内勉強会やワークショップを開催し、SDGsの17の目標や169のターゲットについて学ぶ機会を設けるのも良いでしょう。
2.課題の優先順位付けを行う
SDGsの17の目標に対し、自社が優先的に取り組むべき課題を絞り込みます。
自社事業の業種や、実際に直面している課題との関連性を踏まえながら、複数の課題をピックアップします。そのなかから、実現性が高く、社会的貢献度の高そうなものを絞り込んでいくのが望ましいでしょう。
例えば、製造業であれば「目標12:つくる責任 つかう責任」や「目標13:気候変動に具体的な対策を」などが関連性が高く、IT企業であれば「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」などが適しているかもしれません。
3.目標を決定する
前述のプロセスで設定した課題に対し、具体的な目標を定めます。 このとき、SDGsの3つの側面である、経済・環境・社会をすべて内包する目標を設定するのが望ましいです。
最終的な目標を決めたら、その達成に向けた中間目標を設定します。中間目標は、最終目標に対する進捗状況を定量的に把握できるよう、数値として管理できる指標であるKPI(重要業績評価指標)を用いることが重要です。
例えば、「2030年までにCO2排出量を50%削減する」という最終目標に対して、「2025年までにCO2排出量を25%削減する」といった中間目標を設定することで、進捗を具体的に測ることができます。
4.企業の活動内容とSDGsを紐づける
決定した目標をもとに、実際にどのような取り組みを行うかを計画します。自社の事業の特性や経営方針を踏まえながら、SDGsに向けた取り組みを企業活動に落とし込みます。一部の部署や職位に偏らせず、あらゆる部門が関与するように意識しつつ反映させることが欠かせません。
SDGsの導入を推進する中心的なメンバーだけでなく、従業員一人ひとりが主体的に取り組めるよう、SDGsに取り組む目的とその必要性をしっかりと伝え、社内全体にSDGsの意識が浸透するように働きかけることが大切です。
また、必要に応じて社外のパートナーとも連携しながら、より多くの関係者とともにSDGsに向けた取り組みを行うのも効果的です。
5.取り組みを報告する
具体的な活動内容が決まったら、実際にSDGsに向けた活動を行います。
定期的に活動状況を確認し、方向性がずれていないか、改善点はないかなどを分析します。改善点だけでなく、成果に結びついた事例に関する振り返りも忘れないことが重要です。
SDGsへの取り組みの評価をまとめたら、自社ホームページや営業用パンフレット、SNSなどに掲載し、外部へ発信していきます。 活動すること自体に注視してしまいがちですが、企業におけるSDGsの取り組みでは、外部への情報発信が非常に大切です。
定期的に発信することで、ステークホルダーとの関係性を深められるほか、新たなビジネスチャンスにつながる可能性があります。
企業がSDGsを導入する際のポイント
SDGsの導入は、企業にとって大きな挑戦となります。適切なアプローチを取ることで、効果的かつ持続可能な取り組みが可能です。
ここでは、企業がSDGsを導入する際の重要なポイントについて解説します。
現実的な目標を決める
SDGsを導入する際は、自社の現状に合った実現可能な目標を決めることが重要です。いきなりハードルの高すぎる目標を立てても実現できず、結果的にSDGsに向けた取り組みを行っているだけの、SDGsウォッシュ(※)の状態になってしまう危険性があります。
※SDGsウォッシュとは、「SDGs」と「whitewash(ごまかす/うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、SDGsに取り組んでいるように見えて実態が伴っていないこと
例えば、現状取引先とのやりとりの8割を紙の書類で行っているにも関わらず「3ヵ月以内に完全ペーパーレス化」を目標にしたり、「今後発売する商品やサービスをすべてSDGsに関係するものに限る」などの目標を立てたりするのは、実現性が低いといえます。
成果目標が大規模かつ期限が短かすぎる目標は避け、まずは「資源のリサイクルのためにゴミの分別を徹底する」といった小規模で達成しやすい内容に設定し、徐々に「二酸化炭素排出量の少ないソリューションを開発する」など、大きな目標へスケールアップしていくとよいでしょう。
企業の強みを活かした取り組みを行う
SDGsはボランティアではなく、自社が今後も存続していくための取り組みです。したがって、事業との関連性がある内容に絞り、将来的に自社のメリットになるように意識しながら目標設定や実際の取り組みを進めていくことが重要です。
例えば、建築業界の企業が海の保全に関わる取り組みを行ったり、飲食業界の企業が医療にまつわる取り組みを行ったりしても、自社のメリットにはなりにくいでしょう。目標設定時は、自社との関わりが強い目標を選定し、今までに培った知識や技術を活かせる内容にすることが大切です。
自社の強みを活かしたSDGsへの取り組みは、社会貢献と事業成長の両立を可能にします。
また、従業員にとっても、自身の専門性を活かしながら社会貢献できることで、より主体的な参加が期待できます。
まとめ
SDGsは単なる社会貢献活動ではなく、企業の持続的な成長と社会の持続可能性を両立させるための重要な経営戦略となっています。企業がSDGsに取り組むことで、企業イメージの向上、経営リスクの回避、新たなビジネスチャンスの獲得、持続的な経営の実現といった多くのメリットを得ることが可能です。
静岡県にある環境のミカタでは、廃棄物の処理とリサイクルを通じて、地域課題や環境課題の解決に貢献しています。保有する全工場には太陽光パネルを設置しております。また、食品廃棄物からバイオマス発電された電力等のFIT電力や非化石証書の購入によって、工場の高圧電力使用によるCO2フリーを実現しています。
廃棄物処理にかかるCO2排出が実質ゼロであるため、当社へご依頼いただければ、廃棄物処理を通じて企業様の持続可能な成長の支援が可能です。私たちの経験と知識を活かし、皆様のSDGs達成に向けた取り組みをサポートいたしますので、廃棄物処理はぜひ環境のミカタにご相談ください。