飲食店を閉店するための手続きには、届出や解約などがありますが、やるべきことが多いうえに、期限が定められているものもあります。慌てて進めてしまうと、手続きの抜け漏れや提出期限が守れないといったことが起きやすいです。
飲食店の閉店が決まったら、やらなければならない手続きを洗い出し、提出期限を確認して閉店までのスケジュールを立てるようにしましょう。
今回の記事では、飲食店を閉店するための手続きの流れを詳しくご紹介します。法人向けの閉店手続きのポイントも解説していますので、参考にしてみてください。
目次
飲食店の閉店に必要な手続きは?流れを確認
法人と個人事業主や個人経営の飲食店では、閉店までの手続きが異なります。ここでは、個人の飲食店が閉店するケースをもとに、流れをご紹介します。やるべきことは以下のとおりです。
-
【閉店手続きの流れ】
-
1.金融機関への連絡
-
2.関係各所への連絡
-
3.保健所や税務署など各行政機関への届け出の提出
-
4.原状回復工事
-
5.ガス・水道・電気の解約
それぞれ詳しく確認していきましょう。
①金融機関に連絡
取引のある金融機関に、必ず廃業する旨の連絡を入れます。もしも追加融資で経営を続けられる可能性があるなら、閉店を決める前に金融機関に相談するとよいでしょう。
融資を受けており未返済の残額がある場合、閉店後も支払い続ける必要がありますが、閉店したことを伝えずに返済を続けてはなりません。追加融資や返済期限などが変わるため、必ず金融機関に連絡しましょう。
②関係各所への連絡
連絡しなければならない関係各所をピックアップします。店舗の状況や契約の内容に応じて、余裕を持ってスケジュール調整をしましょう。
物件所有者と管理している不動産管理会社
物件やテナントを借りている場合、解約通知の連絡を管理会社に共有する必要があります。賃貸借の契約内容によって、解約予告を送らなければならない期限が異なるので、契約内容に従って通知しましょう。
また、スケルトン物件か居抜き物件かで、管理会社への引き継ぎ方が変わります。原状回復工事が必要になるのか、ガスや電気などのインフラ停止はどうするのかなど、管理会社としっかり相談しながら進めてください。
リース契約会社・取引先
リース契約を途中で解約した場合、残債の清算が必要です。リース品の所有権はリース会社にあり、勝手に売買や譲渡はできません。リース会社に引き渡しても、支払いは終わらないので注意しましょう。
その他仕入れ先や得意先、お客様にも同様に閉店のご連絡を入れる必要があります。大体1〜2ヵ月前を目安に、店頭の貼り紙や手紙、メール、ホームページ、SNSなどを使って伝えられるとよいでしょう。
ゴミ回収委託業者
ゴミの定期回収を委託している業者にも連絡を入れます。閉店が決まった時点で連絡を入れることが望ましいですが、閉店後にゆっくりお店を片付けたいから、回収の委託は少し継続したいという方もいらっしゃいます。
店舗の片付け状況や都合に合わせて、希望の最終回収日を決めて連絡を入れるとよいでしょう。遅くても希望する最終回収日の2週間前までに業者へ連絡を入れると、手続きがスムーズに進みます。
保険会社
店舗総合保険や地震保険などに加入している場合、解約手続きが必要になります。店舗総合保険とは、火災保険に加えて店舗運営に必要な保険がセットになっているものです。
契約の条件によっては、未払保険料を請求されることがあります。返還または請求される保険料は、支払方法や解約理由によって違うため、契約している保険会社に確認しておきましょう。
従業員
従業員を雇っている場合、解雇の30日以上前に「解雇予告通知」を書面で通知します。
30日未満で解雇しなければならない場合、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支給しなければなりません。トラブルを避けるためにも、未払い賃金や残業代の未払いなどが残らないようにしましょう。
離職者の数が1ヵ月で30人以上になる場合は、ハローワークに「再就職援助計画」や「大量雇用変動届」の提出が必要になります。
③保健所や税務署など各行政機関への届け出の提出
続いて、各行政機関への提出が必要な届出や、忘れずに解約しなければいけないことを解説していきます。特に行政機関の届出は、提出期限が定められているものが多いので、しっかり確認しておきましょう。
保健所
店舗のある地域を管轄する保健所に「廃業届」の提出と、「飲食店営業許可書」の返納をします。期限は廃業日から10日以内のところが多いようですが、保健所によって異なることもあるので必ず確認しましょう。
必要な書類については、保健所や自治体のホームページからダウンロードできたり、電子申請で済ませられたりできるところもあるようです。書類記入をする際、営業許可番号がわからない場合は、食品営業許可証を確認してください。
税務署
税務署に提出しなければならない届出は、以下の3つです。
-
1.個人事業の廃業届出書
-
2.給与支払事務所等の廃止届出書
-
3.消費税の事業廃止届出書
個人事業の廃業届出書は、廃業から1ヵ月以内に管轄の税務署へ提出しなければなりません。給与支払事務所等の廃止届出書は、従業員を雇っている事業者が対象になります。消費税の事業廃止届出書は、消費税の課税事業者の場合に届出が必要です。
青色申告で確定申告していた方は、廃業した年の翌年3月15日まで(※1)にこれらの届出を提出しなければ、追徴課税になることがあるので注意してください。
-
※1:状況に応じて例外となるケースもあるため、詳しくは税務署にご確認ください
消防署
消防署には「防火管理者選任(解任)届出書」を提出します。飲食店は30人以上の収容が可能な建物であれば、開業時に防火管理者の選任届を提出しているため、廃業時には解任届を提出しましょう。防火管理者の解任日は、廃業日を記入します。
用紙は所轄の消防署で受け取るか、行政のホームページからダウンロードできるところもあります。提出期限はありませんが、なるべく速やかに提出しましょう。
警察署
「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出していた店舗は、警察署への届出が必要になります。
営業を廃止する場合は「廃止届出書」に廃止事由を具体的に記入し、管轄の警察署に提出します。風俗営業許可を受けている事業者は、営業許可証と返納理由書を管轄の警察署に提出しましょう。
届出用紙は、警察署のホームページからダウンロードができます。提出期限は、廃業から10日以内です。廃業したにも関わらず、風俗営業許可証の返納を怠ると罰則の対象になることがありますので、忘れずに対応してください。
労働基準監督署
労働保険(※2)に加入しているなら、「確定保険料申告書」の提出が必要です。年度当初の申告・納付(見込み)した概算保険料を精算しますが、確定保険料が概算保険料より多ければ、差額を納付しなければなりません。
提出先は、所轄の労働基準監督署や所轄の都道府県労働局、日本銀行(※3)があります。提出期限は、事業の廃止または終了した日から50日以内です。
-
※2:雇用保険または労災保険のいずれか
-
※3:本店、支店、代理店および歳入代理店が該当します
公共職業安定所
雇用保険に加入していた場合、以下の3つの届出書を公共職業安定所(ハローワーク)に提出する必要があります。
-
1.雇用保険適用事業所廃止届
-
2.雇用保険被保険者資格喪失届
-
3.雇用保険被保険者離職証明書
3つ目の雇用保険被保険者離職証明書は、複写式の専用用紙です。そのため公共職業安定所の窓口で受け取って記載し提出するか、電子申請(e-Gov)を使って提出します。これらの届出書の提出期限は、廃業日の翌日から10日以内です。
ただし、1つ目の雇用保険適用事業所廃止届は控えのコピーを年金事務所に提出する必要があるため、廃業日から5日以内に対応する必要があります。
日本年金機構(年金事務所)
雇用保険や健康保険、厚生年金保険に加入していた場合、以下の2つを廃業日から5日以内に所轄の日本年金機構に提出する必要があります。
-
1.雇用保険適用事業所廃止届の事業主控のコピー
-
2.健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。提出は郵送または窓口に持参するか、オンライン申請も可能です。提出期限が5日と短いため、前もって保険の加入状況は把握しておきましょう。
④原状回復工事
賃貸でテナントや物件を借りていた場合、原状回復工事が必要になることがあります。原状回復工事とは、入居時の内装や設備のないスケルトン状態に戻す工事のことです。契約内容によっては、スケルトンに戻したあとの仕上げ工事まで含まれている場合があります。
賃貸借契約書の内容を確認し、原状回復が必要な範囲を明確にしておく必要があります。原状回復の範囲は、物件の管理者やオーナーと工事業者の立ち合いのもと、確認し進めるとよいでしょう。
⑤ガス・水道・電気の解約
ガス・水道・電気などのライフラインの解約は、契約会社に電話で解約日を連絡すれば完了します。期日などは決められていないものの、ガスなどは解約時に立ち合いが必要になる場合もあるため、早めに連絡するとよいでしょう。
ただし、物件の原状回復工事を行う場合、水道を利用しなければならないこともあるので、水道の解約日は施工業者と相談してから決めてください。また、インターネットの有線やあとから付けたテレビのアンテナなども、忘れず解約の手続きを行っておきましょう。
法人経営の飲食店の廃業手続きのポイント
法人が経営する飲食店が廃業する場合、手続きの流れが個人事業主より複雑になります。ここでは、法人の廃業手続きのポイントを抜粋して解説するため、流れと期限をよく確認したうえで、手続きを進めてください。
解散手続き
解散手続きとは、法人が株式会社である場合に行わなければならない手続きです。以下の流れで進めます。
-
1.株主総会で清算人の選任決議をする
-
2.清算人の選任決議後2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ法人の解散と清算人の選任登記の申請書類を提出する
-
3.債権者保護のための解散公告を行う
-
4.債権者に催告手続きを行う
-
5.解散時の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を受ける
-
6.解散手続きのあと、2ヵ月以内に解散確定申告を行
清算手続き
清算手続きとは、清算人が資産や負債を処分したり、法人の権利関係を整理したりする手続きのことです。
債権の取り立てや返済を行うほか、保有財産を処分し金銭に換え債務返済に充てることもあります。もし債権者への返済が終わり残余財産があれば、分配手続きを行います。債権と債務がなくなれば、清算手続きは完了です。
解散しても清算手続き中は、1年ごとに決算書類を作成し承認を受け、確定申告の手続きをする必要があります。
清算結了
清算手続きが終わると各所にその旨を報告します。清算結了の流れは以下のとおりです。
-
1.決算報告書を作成する
-
2.株主総会で承認を受ける
-
3.株主総会で承認されたあと、2週間以内に本店所在地を管轄する法務局で清算結了登記を行う
-
4.都道府県税事務所と税務署、市区町村の役所へ清算結了の届出をする
これらの手続きが終わると完全に会社がなくなった状態になり、廃業手続きが完了します。
飲食店の閉店手続きまとめ
飲食店の閉店手続きは、廃業届のほかにも関係各所への届出やインフラの解約、原状回復工事など、やるべきことが多くあります。なかには期限を守らなければ罰金になってしまうものもあるので、抜け漏れがないよう洗い出しましょう。
飲食店を閉店するにあたって、ゴミ回収や不用品回収でお困りのことがあれば、環境のミカタへご相談ください。ゴミ回収を契約いただいていない方の対応いたしますので、お気軽にご連絡ください。
また環境のミカタでは、不用品や粗大ゴミの分別から運び出し、回収までに対応している「うっちゃるら」も運営しています。不用品1品の回収から店舗の整理や解体のお手伝いまで、ぜひお任せください。