「おくすりシート(PTPシート)」は、薬を服用する際に必ず手にするもの。その役割はよく知られていますが、使用後にどのように処理されているか知っていますか?
日本では年間約130億枚、重さにして13,000トンものおくすりシートが使用されています。しかし、その多くが焼却処分され、大量のCO₂を排出していることから環境への影響が懸念されているのです。
実は、おくすりシートはリサイクル可能な資源。適切に再利用することで、環境負荷を大幅に軽減できる可能性があります。
本記事では、おくすりシートの現状とリサイクルの可能性、そして環境のミカタが新たに開始した取り組みについて詳しく紹介します。
目次
私たちの身近にある「おくすりシート」について知ろう
薬を服用する際に必ず手にするおくすりシートですが、その仕組みや役割について考えたことはあるでしょうか。
ここでは、おくすりシートの基本的な情報と、意外と知られていない現状について解説します。
おくすりシートって何?
おくすりシートとは、病院やクリニックで処方される薬や、市販の錠剤・カプセルが内包されたシートのことです。「PTPシート(Press Through Package)」とも呼ばれ、主にプラスチックとアルミで作られています。透明のプラスチック部分を押し、裏側の薄いアルミ箔を突き破ることで、1錠ずつ薬を取り出せる仕組みです。
おくすりシートは、単に薬を包装するだけでなく、以下のような重要な役割を果たしています。
-
◎薬の劣化防止:湿気や酸化を防ぎ、薬の品質を保つ
-
◎薬の破損・汚損防止:持ち運びや保管時の破損・汚れを防ぐ
-
◎取り出しやすさの向上:高齢者や手の不自由な方でも簡単に薬を取り出せる
意外と知られていない!おくすりシートの現状
日本では、年間約13,000トンものおくすりシートが生産・使用されています。シート1枚あたりの重さはわずか1g程度ですが、年間生産量は約130億枚にのぼります。これを積み重ねると、地球約1.3周分にも相当する長さです。
実は、おくすりシートには「プラマーク」が印字されており、リサイクルが可能な素材で作られています。にもかかわらず、その大半は可燃ごみとして焼却処分されており、リサイクルは進んでいないのが現状です。その主な理由としては以下が挙げられます。
-
・資源としての認識が低く、リサイクルできることを知らない人が多い
-
・一般家庭では一度に出る排出量が少なく、分別・回収が難しい
-
・自治体ごとに回収ルールが異なるため、仕分けが難しい
おくすりシートのリサイクルがもたらす可能性
高齢化が進む日本では、今後ますます薬の使用量が増える見込みです。それに伴い、おくすりシートの生産量も増加することが避けられません。
13,000トンの廃棄物を焼却すると、約30,000トンのCO2が排出されます。また、焼却灰の埋立には約3,000平方メートルの土地が必要となるのです。
※上記の数値は自社独自の計算に基づくものであり、おおよその目安となります。
おくすりシートを適切にリサイクルすれば、これらの環境負荷を大幅に軽減できます。
-
◎リサイクルによるCO2削減:焼却により発生する30,000トンのCO2排出を抑制
-
◎埋立地の削減:埋立処分される焼却灰が減少し、有限である埋立地を節約
-
◎資源の有効活用:プラスチックとアルミを再利用し、新たな製品として資源を有効活用
実際に、大手製薬会社を中心にリサイクル事業が進められており、使用済みのおくすりシートの資源化が可能であることが証明されています。これらの取り組みをさらに拡大することで、医薬品包装の環境負荷を最小限に抑え、持続可能な社会に貢献できるのです。
実施企業1:第一三共株式会社
おくすりシートリサイクルプログラムとして病院や薬局などでおくすりシートを回収し、資源を再生・再利用処理する
参考:第一三共株式会社
実施企業2:大塚製薬株式会社
PTP包装廃材をCO2の少ない鉄道輸送を利用(モーダルシフト)して運び、マテリアルリサイクルにてプラスチックとアルミ箔に分離し、再利用する
参考:大塚製薬株式会社
実施企業3:アストラゼネカ株式会社
医薬品生産工場で出るPTP廃材をマテリアルリサイクルし、プラスチックとアルミを分離し再利用する
参考:アストラゼネカ株式会社
環境のミカタでも対応可能に!おくすりシートのリサイクル
前述のように、おくすりシートは本来リサイクルが可能な資源でありながら、多くが焼却処分され、CO₂排出や埋立地の確保といった環境負荷の要因となっています。
こうした問題を解決するために、2025年2月より、環境のミカタの「アースプロテクションセンター第3工場(EP3)」にて、おくすりシートのリサイクルが可能となりました。
環境のミカタは、物理的な分離技術を採用することで、加熱・焼却・化学反応を必要とせず、環境負荷を最小限に抑えた処理が可能です。アルミの回収率は95~98%と高水準を誇り、資源の有効活用が期待できます。
また、リサイクルループで生み出された電力と再生可能エネルギーを組み合わせた電力を使用することで、産業廃棄物処理工場として初めて、工場高圧電力の使用におけるCO₂排出量ゼロを実現しました。
これにより、リサイクル自体が持続可能なプロセスとなり、環境負荷のさらなる軽減につながります。
おくすりシートのリサイクルの流れを紹介

環境のミカタでは、おくすりシートを回収したのち、専用のPTPシート破砕分離施設にてリサイクル処理を行っています。シートを破砕した後、アルミとプラスチックに分離する仕組みです。
各工程は自動化されているため、1~2人でのオペレーションでの稼働が可能となっています。
【回収したPTPシート】

【PTPシート破砕分離施設】

【分離したアルミとプラスチック】
左側から、アルミ・プラスチックの順です。


【製品】

処理が終わった原料は、素材の加工会社に運ばれ、アルミ製品(例:缶や建築資材など)およびプラスチック製品(例:塩化ビニール管・建築資材など)として新たに生まれ変わります。
まとめ
おくすりシートは、薬の品質を保ち、安全に服用できるようにする重要な包装資材ですが、その大半が焼却処分され、環境負荷の要因となっています。本来はリサイクルが可能であるにもかかわらず、認知不足や回収体制の課題から、資源としての活用が進んでいないのが現状です。
おくすりシートを適切にリサイクルすることで、CO₂排出を抑え、埋立地の節約や資源の再利用が可能となります。
環境のミカタでは2025年2月から、おくすりシートのリサイクルを本格的に開始しました。これにより、焼却による環境負荷を軽減し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。今後、こうした取り組みが全国に広がることで、より多くのおくすりシートがリサイクルされ、資源の有効活用が進むことが期待されます。
おくすりシートの適切な処理にお困りの製薬会社様・関連事業者様は、お気軽にお問い合わせください。
