戦後、日本は急激な経済成長を遂げました。しかし、その背景で廃棄物の増加と多様化という新たな課題が生まれ、後の「産業廃棄物処理のマニフェスト」につながっています。
今では産業廃棄物処理における前提となっている産廃マニフェストは、どのようにして今日の形になったのでしょうか。改めて成り立ちを知ることで、その重要性が理解できるかと思います。
今回は、産廃マニフェストが生まれた背景や歴史をわかりやすく解説します。運用の流れも、この機会に再確認しておきましょう。
目次
1.産業廃棄物処理のマニフェストが生まれた背景
まずは、産業廃棄物の法制定の歴史を遡ってみましょう。
廃棄物処理の法制定は清掃法から始まった
廃棄物処理の法制定は、戦後の1954年に制定された清掃法から始まりました。
当時、ゴミ処理は人力で行われていましたが、人口増加と経済成長にゴミ処理が追い付かなくなったのです。その結果、河川や海洋へのゴミの投棄や、「野積み」が問題になりました。
不衛生な環境でハエや蚊が大量発生し、伝染病が深刻化したことを受け、1954年に清掃法が施行。汚物を衛生的に処理し、公衆衛生の向上をはかるのが目的で、廃棄物はすべて行政が処理することとなりました。
廃棄物処理法の成立
高度成長期(1960年代~1970年代)になると近代化が進み、スーパーマーケットやコンビニをはじめとする大量生産・大量消費の時代に突入します。
すると、汚泥や合成樹脂くず、廃油など、産業の活発化によって新たなゴミ問題が浮上しました。清掃法で規定されていた市町村の対応だけでは不十分になり、1970年に実施された清掃法の全面改定へとつながったのです。
新たに制定された 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)では、廃棄物を次のように2分し、産業廃棄物の処理は、事業者が処理責任を有することになりました。
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●一般廃棄物:行政が処理責任
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●産業廃棄物:事業者が処理責任
不法投棄問題が深刻化
高度成長期~バブル期(1980年代~1990年代前半)には、大型家電などの適正な処理が困難な廃棄物も登場します。ペットボトルが普及したのもこの頃です。
廃棄物処理法によって、産業廃棄物は事業者が処理責任を有することになりましたが、産業廃棄物の廃棄業者から安く処理を請け負って不法投棄を行い、不正に利益を得る業者が出現します。それにより、不法投棄問題が深刻化しました。
廃棄物の適正な処理・減量化・リサイクルを促すための新たな制度が必要になり、産廃マニフェストの誕生につながったのです。
このように、産廃マニフェストの成り立ちには、戦後の日本の経済発展とゴミ問題が深く関係しています。
2.産業廃棄物処理のマニフェストの歴史
ここでは、産廃マニフェストが誕生してから今日までの、歴史の流れを見ていきましょう。
1990年:任意運用開始
産廃マニフェストは、産業廃棄物の流れを確認し、適切な処理を行うことを目的として厚生省(現在の環境省)の行政指導から始まりました。
1993年:義務化
任意運用として開始された産廃マニフェストは、1993年に義務化されました。この時点では、特別管理産業廃棄物のみが対象とされ、運用は紙マニフェストでした。
1998年12月:対象範囲が拡大し電子マニフェストが制度化
1998年12月には、産廃マニフェストの対象がすべての産業廃棄物に拡大され、同時に電子マニフェストが制度化されました。
3.産業廃棄物処理のマニフェストの運用方法
産廃マニフェストは、正しく運用することが何よりも大切です。あらためて運用方法を確認しておきましょう。
マニフェストの区分
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、産業廃棄物の種類と行き先ごとに作成が必要です。一次マニフェストと二次マニフェストに分かれますが、いずれも同じ形式の紙を用います。
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●一次マニフェスト:排出事業者、収集運搬業者、処分業者間でやりとり
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●二次マニフェスト:産業廃棄物の処分を委託される中間処理業者、収集運搬業者、最終処分業者間でやりとり
マニフェスト運用の流れ
A票 | 排出事業者の保存用 |
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B1票 | 運搬業者の控え |
B2票 | 運搬業者から排出業者に返送され、運搬終了を確認 |
C1票 | 処分業者の保存用 |
C2票 | 処分業者から運搬業者に返送され、処分終了を確認(運搬業者の保存用) |
D票 | 処分業者から排出事業者に返送され、処分終了を確認 |
E票 | 処分業者から排出事業者に返送され、最終処分終了を確認 |
紙マニフェストは複写式で7枚綴りになっており、それぞれに役割があります。発行したマニフェストは、5年分の保管が義務付けられています。
マニフェストの返送期限と確認義務
マニフェストには、それぞれ返送期限が定められています。期限までに返送がなかった場合、排出事業者は処理業者に状況を問い合わせ、生活環境の保全のために必要な措置を講じなければなりません。
さらに、30日以内に講じた措置などを、都道府県知事に報告することが義務付けられています。
4.廃棄物処理のことは環境のミカタにご相談を!
今回は、産廃マニフェストが生まれた背景や歴史についてわかりやすく解説しました。
環境のミカタでは、廃棄物の収集・運搬・処理・リサイクルを行っています。
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・産廃マニフェストについて疑問や不安なことがある
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・自社がやらなければならないことを知りたい
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・自社の対応について相談したい
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
次回は、産廃マニフェストの違反による罰則について詳しく解説しますので、あわせてご覧ください。