産業廃棄物は、事業活動にともなって発生する廃棄物であり、適切な処理が必要です。産業廃棄物を、処理施設まで運搬する業務を「産業廃棄物収集運搬」といいます。
本記事では、産業廃棄物収集運搬の業務内容や役割、許可制度について詳しく解説します。事業所の廃棄物担当者様や、廃棄物収集運搬に関する知識を得たい方は、最後までご参照ください。
目次
産業廃棄物収集運搬とは
産業廃棄物収集運搬とは、排出事業者から委託された産業廃棄物を、法と委託契約に従い、性状を変えることなく、飛散、流出を伴わないよう留意して、処理施設まで迅速に運搬する業務のことです。
産業廃棄物収集運搬業者は、排出事業者から産業廃棄物を引き受け、処理施設まで安全に運搬する責任を負っています。具体的な業務としては、以下が挙げられます。
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・排出事業者からの産業廃棄物の受け取り
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・産業廃棄物の種類や数量の確認
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・産業廃棄物の適切な積み込み・荷造り
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・処理施設までの運搬
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・処理施設への引き渡し
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・マニフェスト※の発行・管理
※マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、廃棄物の処理が適正に行われたかどうかを確認するために作成する書類です。様式に沿って記入・提出し、マニフェスト伝票の写しについては、5年間の保管が義務付けられています。
産業廃棄物は、一般廃棄物とは異なる処理方法が定められており、収集運搬業者も都道府県知事から許可を得なければなりません。
産業廃棄物収集運搬の役割
産業廃棄物収集運搬の主な役割は、環境に配慮した適切な産業廃棄物の管理・運搬と、排出事業者が法令に基づいて適切に産業廃棄物を処理するためのサポートです。
適切な産業廃棄物の管理と運搬
産業廃棄物は、適切に処理しないと土壌や水質を汚染し、大気汚染を引き起こすなど、環境に深刻な悪影響を及ぼしかねません。
収集運搬業者は、産業廃棄物を安全かつ適切に収集し、専用の処理施設へ運搬することで、環境への悪影響を最小限に抑える役割を担っています。
法令遵守のサポート
産業廃棄物の収集運搬は、廃棄物処理法により厳しく規制されています。罰則は違反内容によっても異なりますが、例えば廃棄物の不法投棄の場合、法人は3億円以下の罰金(個人は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方)です。
排出事業者が、法令に基づいて適切に廃棄物を処理できるようサポートするのも、産業廃棄物収集運搬の重要な役目です。
産業廃棄物収集運搬の許可とは?
産業廃棄物収集運搬は、都道府県知事から許可を得た業者のみが行えます。
排出事業者が産業廃棄物収集運搬業者へ依頼する場合、万が一無許可の業者へ委託してしまうと、法人は1,000万円以下の罰金(個人は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方)が科せられます。
そのため、排出事業者側は「委託先の産業廃棄物収集運搬業者が許可を得ているか」を、必ず確認しなければなりません。
ただし、業者が収集運搬できる産業廃棄物は、許可の範囲内の品目に限られています。マニフェストと現物の相違がないことを確認する必要があるため、契約した品目以外は運搬できません。この点は、あらかじめ理解しておきましょう。
なぜ許可が必要なのか
産業廃棄物には、有害物質が含まれているものや、感染性のあるものなどが挙げられます。不適切な処理方法で収集運搬を行うと、環境汚染や人体への危害といったリスクが生じる可能性があります。
許可制度は、こうしたリスクを防止するために、廃棄物処理法に基づいて設けられたルールです。許可を受けた業者は、法令に基づいた適切な方法で収集運搬を行うことが求められます。
例えば、運搬時は、処理する廃棄物の形状・荷姿に適した車両を利用することが必要です。
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・固形状:ダンプ、パッカー、平ボディ、アームロール車など
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・液状:バキューム車など
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・泥状:バキューム車など
許可業者に委託する際は、どのような車両を使用するかについても、事前に確認しておくと良いでしょう。
許可が不要な場合もある
一方で、産業廃棄物収集運搬の許可がいらないケースもあります。
産業廃棄物を自社運搬する
自社運搬とは、排出事業者自身が、自社の事業場で発生した産業廃棄物を、許可を受けた処理施設まで運搬する行為を指します。
許可業者に委託するのではなく、自社で責任を持って運搬を行うため、費用を安く抑えられる点がメリットです。運搬に際して社内管理が可能なため、法律遵守を確実に行えることや、柔軟に対応できる点も強みです。
ただし、自社運搬の場合、以下を遵守しなければなりません。
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・車両への「会社名」「産業廃棄物収集運搬車」の表示義務(「産業廃棄物収集運搬車」は140pt以上、「社名」は90pt以上。視認しやすい色で表示)
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・産業廃棄物の種類や量、積載日、事業所の名称・住所・連絡先などを記載した書面の携帯
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・廃棄物の飛散・流出・悪臭・騒音への配慮、アスベストの分別
これらの規則を守らないと、行政から改善命令を受ける可能性があります。場合によっては企業名が公表され、ブランドイメージに影響を与えるため、留意が必要です。
また、自社運搬であっても、廃棄物処理を処理場へ委託する場合は、マニフェストの作成が必要な点に注意しましょう。
専ら物を運搬する
専ら物(もっぱらぶつ)を運搬する際も、産業廃棄物収集運搬の許可がいりません。
専ら物の定義は、「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物」です。具体的には、リサイクルされることが確実な、下記のような廃棄物が該当します。
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・古紙
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・古繊維
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・鉄くず(古銅等を含む/金属くず)
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・空きびん類(ガラスくず)など
専ら物を運搬するケースでは、マニフェストの運用が不要なことも特徴です。
許可の有効期間
産業廃棄物収集運搬の許可を得ていない、あるいは有効期限が切れた業者に廃棄物処理を依頼すると、排出事業者側にも罰則が科される可能性があります。
そのため、排出事業者は「委託先の許可申請状況」を適切に把握しておくことが重要です。
許可の有効期限は原則5年(優良認定業者は7年)
産業廃棄物収集運搬業許可の有効期間は、原則5年、優良認定業者の場合は7年です。委託先の廃棄物収集運搬業者が、期限内に許可の申請を行っているかを確認しましょう。
なお、優良認定業者とは、通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者を、都道府県・政令市が審査して、認定を受けた産業廃棄物処理業者のことです。
環境のミカタも、複数の自治体から「優良認定業者」として認定されています。
優良認定業者へ委託する場合、有効期限が長い分、通常より確認の回数が少なく済む点がメリットです。また、優良認定業者へ委託することで、現地確認を省略できるといった優遇措置が適用されます。
許可の更新中に有効期限が過ぎた場合
許可更新の申請中に許可の有効期限が過ぎてしまった場合でも、更新申請が受理されていれば、引き続き廃棄物処理業を営むことが可能です。無許可の業者に委託していることにはなりません。
更新が許可された場合、新しい許可の有効期限は、以前の許可で指定された有効期限の翌日から開始されます。
許可に関する注意事項
許可を得ている業者に依頼する場合でも、すべての廃棄物を運搬してもらえるわけではない点には注意が必要です。
収集運搬業者が産業廃棄物収集運搬の許可を持っていても、契約書に明示された品目以外の廃棄物は運搬できません。つまり、普段と異なる例外的な廃棄物が発生した場合、契約外の品目を一緒に運搬してもらうことはできないということです。
この制約は、法令遵守の観点から厳格に運用されており、違反すると排出事業者も罰則を受ける可能性があります。そのため、排出事業者は産業廃棄物の種類や量を正確に把握し、契約時に偽りなく記載する必要があります。
マニフェストを作成する際は、収集運搬の対象となる品目の範囲を詳細に定め、契約内容と一致させるようにしましょう。
まとめ
産業廃棄物収集運搬は、環境に配慮して、安全に廃棄物を管理・運搬する重要な役割を果たしています。 産業廃棄物の不法投棄や無許可業者への委託は、廃棄物処理法に基づき罰則が科せられます。
そのため、排出事業者が産業廃棄物収集運搬業者に委託する際は「各都道府県知事から許可を受けているか」「期限内に許可の申請を行っているか」を、確認しなければなりません。
自社で廃棄物の運搬を行うことも可能ですが、専用車両の準備や必要事項を記載した書面の携帯が必要であり、準備に手間が掛かります。したがって、産業廃棄物の処理は、産業廃棄物収集運搬の許可を得た業者へ委託するのが得策です。
環境のミカタは、複数の自治体から「優良認定業者」として認定されており、安心安全な産業廃棄物収集運搬サービスを提供しています。 産業廃棄物に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。