飲食店から出るゴミの多くは、生ゴミです。事業者の方であれば、捨て方や分別には普段から注意を払っていることが考えられます。しかし、きちんとした業者にゴミ回収を依頼していても、ゴミの処理方法を改善したいと思うことがあるかもしれません。
ゴミ問題をそのまま放置すると、お店が閉店に追い込まれる原因になってしまう可能性もゼロではありません。そのため問題を見つけたら見直すタイミングととらえ、すぐに対処しましょう。
この記事では飲食店のゴミ問題を解決するため、廃棄物処理を見直す手順をご紹介します。見直しの際に確認すべきこと、ゴミの分別方法もまとめているので、参考にしてみてください。
目次
飲食店のゴミ問題はどのような内容?
飲食店オーナーの抱えるゴミに関する悩みは、以下のようなものが多いのではないでしょうか。
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・生ゴミが多いのにゴミ置き場が狭いため、一日でも収集が止まると困る
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・粗大ゴミの処分に時間がかかり、回収されるまで置き場所に悩む
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・廃油のリサイクル方法がよくわからない
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・捨て方が正しいか、判断に迷うものがある
多くの自治体では、事業から出たゴミを家庭ゴミと同じように処分することは禁止されています。 家庭ゴミで捨てられる品目でも、事業ゴミを家庭ゴミの集積所に捨てることはできません。 そのため、飲食店は自分で適切に処理をする必要があります。
飲食店のゴミは事業系一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分かれます。排出されるゴミの割合としては事業系一般廃棄物のほうがメインになりますが、品目によっては産業廃棄物に分類されるものもあり、法律でも規定されているため、割合が低いからといって適当に対応してはいけません。
産業廃棄物と事業系一般廃棄物の処理について確認し、課題がある場合は見直しを行いましょう。
また、飲食店におけるゴミ回収についてはこちらのページでも詳しく解説しております。定期回収の費用も記載していますので、気になる方はチェックしてみてください。
飲食店におけるゴミの定期回収の費用相場は?回収業者を選ぶときの注意点も解説 >>
飲食店が産業廃棄物処理を見直す手順
問題を先延ばしにしないためにも、ぜひ現状のゴミ処理を見直してみましょう。 同じような流れで一般廃棄物の処理を見直せますが、ここでは産業廃棄物処理を例に考えます。 産業廃棄物処理を見直す手順は、次の3ステップです。
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手順1.契約書を確認し、現状を把握する
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手順2.ゴミ処理について実際に確認する
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手順3.問題点を洗い出す
手順1.契約書を確認し、現状を把握する
まずは、以下の書類を手元にご用意ください。
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・締結しているゴミ処理業者との契約書
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・排出された廃棄物の種類と量を記したマニフェスト伝票(産業廃棄物管理票)や書類
これらの書類が手元にない場合、業者に連絡するとデータを送ってもらえます。過去1年間分ほどを目安にデータを用意してもらいましょう。
見直しは、現状出しているゴミの量や種類、回収方法、業者がゴミをどこで処理しているか、などの確認から始めます。これらの書類から悩みの原因がどの過程で生じているのかを把握でき、今後の対策や改善案を考えられます。
手順2.ゴミ処理について実際に確認する
続いて以下4つのポイントで、ゴミ処理が実際にどのようにおこなわれているのか、実地確認をしましょう。
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・ゴミ置き場を点検する
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・排出する種類のゴミすべて、業者と契約しているか
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・マニフェスト伝票(産業廃棄物管理票)が発行されているか
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・収集現場に一度立会い、収集時間や収集方法などの確認
現状把握によって店舗側で改善できるゴミ問題を発見できれば、コスト削減につながる可能性もあります。
手順3.問題点をあらいだす
現状を確認すると、問題点や改善すべき点を見つけやすくなります。例えば従業員のゴミ出しの様子から、ゴミの分別がわかりにくかったり、分別すべきという認識にバラツキがあったりすることに気がつくかもしれません。
また、業者のゴミ回収方法の乱雑さが原因でゴミが散乱したり、生ゴミから液ダレを起こしたりしている可能性もあります。 現状の抱えている問題や実地確認から得られた問題のほか、データや契約内容から改善したい点など、問題点を洗い出してみましょう。
飲食店が産業廃棄物処理を見直すときに確認したいこと
飲食店が産業廃棄物や事業系一般廃棄物といったゴミの処理を見直すにあたって、分析や改善が必要になりますが、どういった点を確認したらいいか悩んでしまうものです。 産業廃棄物を例に、見直す際に考えたいポイントをご紹介します。
コンプライアンスの遵守
コンプライアンスとは、企業が法令や社会的な倫理、社内ルールを守って活動することを指します。ゴミ処理に関していえば、「廃棄物は事業主が最後まで責任を持って処理にあたる」という意識を持つことが大切です。
産業廃棄物には契約書の締結に加えて、マニフェスト伝票の発行、年次による実績報告が義務づけられています。もし実施していない場合は必ず対応しましょう。
また、近年では食品リサイクル法への対応も必要になります。産業廃棄物の処理と併せて、確認するようにしましょう。
近隣からのクレームの予防
近隣からクレームが出そうなポイントはないか確認し、予防措置を講じておきましょう。
近隣からクレームになりやすいものとしては、生ゴミの液ダレによる悪臭や害虫の発生、ゴミの散乱、回収時の騒音などがあります。これらの問題はその場しのぎではなく、原因の根本から解決策を立てる必要があります。
ただ、これらは事業者だけで解決するのが難しい場合もあるかもしれません。回収業者に回収時間や収集方法を変えてもらえないかなどを相談し、協力して予防していきましょう。
従業員へのゴミ処理対応の周知
ゴミ処理のルールを従業員がきちんと理解できているか確認しましょう。飲食店では、アルバイトに学生や外国人を雇われていることも少なくありません。ゴミのリサイクルや分別は頭でわかっていても、ルールの徹底や動機付けが難しいことも考えられます。
ゴミがきちんと分別されていなければ、リサイクルへの取り組みが不十分になり、前述したコンプライアンスを遵守することもできなくなります。手間はかかりますが、従業員向けにわかりやすいマニュアルやルールを作っておくとよいでしょう。
飲食店が見直したい事業系一般廃棄物の分別方法
飲食店が見直すべきゴミの分別方法を、ゴミの種類と捨て方にわけて解説します。
ゴミの種類
事業から出るゴミは、事業系一般廃棄物と産業廃棄物の2通りに区分されます。飲食店から出ることが多いゴミの種類ごとに分別したものが以下の表になります。あくまで一例となりますが参考にしていただければと思います。
事業系一般廃棄物※1
品目 | 具体例 |
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燃えるゴミ/可燃ごみ | 食べ残し、紙ナフキン、割り箸、紙コップ、レシート、書類、パンフレット、紙のメニュー |
粗大ゴミ | 木製の大型の食器棚・机、椅子 |
紙くず | 段ボール、古紙 |
産業廃棄物
品目 | 具体例 |
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廃プラスチック | レトルトパウチ、ラップ、発泡スチロール、ラミネート加工のメニュー、おしぼりの袋、傘の袋、ペットボトル |
金属くず | アルミホイル、ナイフ、フォーク、スプーン、缶、蛍光灯 |
ガラス・コンクリート 陶磁器くず | ビン |
廃油 | フライヤーの廃食油、グリストラップ |
汚泥 | 汚泥(油泥)、ヘドロ |
小型家電リサイクル法対象品
品目 | 具体例 |
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小型家電 | プラスチックトレー、パソコン、ハンディ機器、タブレットなど ※2 |
※1 自治体により対応が異なる場合があるため、詳細はご相談ください。 ※2 リチウムイオンバッテリー内蔵の製品に関しては注意が必要です。
グリストラップとは、油や調理残さなどが下水に直接流れ込まないよう、一時的にストックする装置のことです。自動できれいにならないため、多いところでは毎日ヘドロやゴミを取る必要があります。このヘドロは、産業廃棄物として処分しなければなりません。
ゴミの捨て方
以下の表は、飲食店から出るゴミの種類別の捨て方です。
品目 | 処理方法 |
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燃えるゴミ/可燃ごみ | ・一般廃棄物業者に委託 ・自分で自治体の処理場に持ち込む |
粗大ゴミ | ・一般廃棄物業者に委託 ・自分で自治体の処理場に持ち込む |
紙くず | ・一般廃棄物業者に委託 ・自分で自治体の処理場に持ち込む |
廃プラスチック | ・産業廃棄物業者に依頼 |
金属くず | ・産業廃棄物業者に依頼 |
ガラス・コンクリート陶磁器くず | ・産業廃棄物業者に依頼 |
廃油 | ・産業廃棄物業者に依頼 ・廃油専門のリサイクル業者に依頼 |
汚泥 | ・産業廃棄物業者に依頼 |
小型家電 | ・公共施設に設置された回収ボックスに投入する ・直接回収場所に持ち込む ・民間事業者による回収を利用する(有料・一部無料)※3 |
※3:自治体により対応が異なります
燃えるゴミ(一般廃棄物)の回収を委託する場合は、業者が「一般廃棄物収集運搬業許可」を取得しているか確認しましょう。
また、産業廃棄物の回収を委託する場合は、業者が廃棄する品目に対応した「産業廃棄物収集運搬許可」を持っているか確認してください。例えば、業者に廃油の許可があっても廃プラスチック類の許可がなければ、廃プラスチック類の回収はできません。
ただし、有価で買い取ってくれる廃油専門のリサイクル業者は許可が不要です。
飲食店のゴミ問題まとめ
飲食店がゴミの問題を抱えた際に、廃棄物の処理を見直すための手順や確認すべきことをご紹介しました。 問題の原因はさまざまですが、問題を洗い出して一つずつ改善に向けて対策を立てていけば解決に向かっていきます。
現状の産業廃棄物処理業者では解決しないのであれば、業者を思い切って変えてみるのも良いかもしれません。 当社では、環境コーディネーターが廃棄物に関するお悩みにお応えしています。小さなことでもお気軽にご相談ください。