近年、食品廃棄物のリサイクルが注目を集めています。日々の生活で発生する食品ロスや、食品産業から排出される廃棄物の処理は、環境問題の観点からも重要な課題となっています。
本記事では、食品廃棄物の現状や課題、リサイクルの必要性、そして主な手法について詳しく解説します。 また、環境のミカタが取り組む食品廃棄物のリサイクル事例もご紹介します。
持続可能な社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることは何か、一緒に考えていきましょう。
目次
1. 食品廃棄物・食品ロスの現状
食品廃棄物とは、食品の製造、流通、消費の過程で発生する廃棄物全般を指します。 一方、食品ロスは、本来食べられるにもかかわらず廃棄される食品のことです。
令和4年度の農林水産省の推計を基に、食品廃棄物およびその中に含まれる食品ロスの発生量を以下にまとめました。
食品廃棄物 | 食品ロス | |
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家庭系廃棄物 | 707万トン | 236万トン |
事業系廃棄物 | 1,525万トン | 236万トン |
上記の表の通り、日本では合計2,232万トンの食品廃棄物が発生しており、そのうち食品ロスと考えられる量は472万トンに上ります。 この量は、国民一人一人が毎日おにぎり約1個分相当を廃棄しているのと同じです。
食品廃棄物の発生源を見ると、事業系の食品廃棄物の8割以上が食品製造業から発生しています。 食品ロスにおいても、事業系が5割を占めています。
2000年度に制定された食品リサイクル法に基づき、2030年までに事業系食品ロスを273万トンまで削減するという目標が設定されていました。 この目標に対して、2022年度(令和4年)時点で既に236万トンまで削減されており、目標を前倒しで達成しています。
この成果を受けて、今後は新たな削減目標について議論が行われることが予想されるでしょう。
2. なぜ食品ロスは問題なのか
食品ロスの増加による問題は、主に以下の3つです。
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・環境汚染
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・多額な処理費用
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・途上国の飢餓
これらの問題について、詳しく見ていきましょう。
環境汚染
食品ロスが環境に与える影響は決して小さくありません。 食品ロスは一般的にゴミとして廃棄されるため、その運搬や焼却の過程でCO2を排出し、地球温暖化の一因となります。
特に生ゴミなど水分を多く含む食品廃棄物は、焼却に多くのエネルギーを必要とするため、より多くのCO2を排出することになります。 日本では食品廃棄物を主に焼却処理していますが、世界には埋め立て処分を行っている国も多いです。
多額な処理費用
食品を廃棄する際の処理費用以外にも、そもそも生産・加工・流通の各段階でも多くの費用が発生しています。 つまり、食品ロスは、これらすべての過程で投じられた費用を無駄にしてしまうのです。
産業廃棄物の廃棄にかかる費用は排出事業者が負担しており、一般廃棄物の廃棄費用については私たちの税金が使用されています。 さらに、生産・加工・流通といった工程には多くの人の労力と時間が投入されています。
こうした人的資源や時間のコストも考慮すると、食品ロスの増加は社会全体に多額な経済的損失をもたらしていると言えるでしょう。
途上国の飢餓
食品ロスは主に先進国で発生している一方で、途上国では食料不足や栄養不足といった問題が深刻化しており、不均衡な状況が生じています。
世界の食料生産量を見ると、実は地球上のすべての人が食べるのに十分な量が生産されています。 しかし、現状ではその分配が適切に行われていません。
食品が廃棄されるタイミングは、主に需要を超えた過剰生産や、加工・流通・消費段階での無駄が原因です。
先進国での食品ロスは、間接的に途上国の飢餓問題にもつながっているため、先進国において適正量の生産・加工を行い、効率的な流通システムを構築することが求められます。
3. 食品廃棄物はどのようにリサイクルできる?
食品廃棄物の問題に対処するため、現在では様々なリサイクル方法が開発・実践されていますが、ここでは以下の4つのリサイクル方法をご紹介します。
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・飼料化
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・肥料化
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・バイオディーゼル燃料化
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・メタン化(バイオマス発電)
リサイクルの優先度は飼料化、肥料化の順に高く、それらが困難な場合は他のリサイクル方法を行うことが重要とされています。ただし、リサイクル以前に、まずは食品廃棄物の発生を抑制することが大切です。
飼料化
飼料化は、食品残さや生ごみを家畜用の飼料として再利用するリサイクル方法です。
乾燥処理や液状混合処理によって豚や牛、鶏向けの飼料が生産されます。ただし、牛の場合は病気の感染を防ぐため、一部の原料の利用は禁止されているなど原料規制があります。飼料化はエコフィードとも呼ばれ、原料にはパンくずや野菜くずなど食品製造工場から出る残さが多く利用されています。
食品廃棄物の量に対して国内の飼料自給率は20%と低く、輸入に依存しているのが現状であり、食品廃棄物の問題に向き合うにあたって重要なリサイクル手法といえます。
しかし今後、より飼料化リサイクルを活発にしていくためには、異物混入を防ぐことや品質管理が難しいという課題を解消していく必要があります。
肥料化
肥料化は、主な原料となる食品残さを微生物が分解・発酵して肥料化する方法です。他のリサイクル方法に比べて、コストや技術的にも参入ハードルは低くなっています。
環境のミカタでは、食品産業の排出事業者から排出された「動植物性残さ」「汚泥」「廃酸」「廃アルカリ」に加え、静岡県藤枝市の一般家庭の生ゴミを収集し、これらを肥料へとリサイクルしています。 3機のリサイクル施設により、1日に約20トンの製造が可能です。
肥料化リサイクル施設には脱臭施設が隣接されており、リサイクルの過程で発生する発酵ガスを無臭化してから放出しています。
再資源化された肥料は、地元の農家や一般家庭へ販売しています。 これにより、食品廃棄物が肥料となり、その肥料で育てられた作物が再び食品となる、という循環型のリサイクルシステムを実現しています。
バイオディーゼル燃料化
バイオディーゼル燃料は、植物性の油を原料にして作られる化石燃料の代替となるものです。
環境のミカタでは、廃食用油(天ぷら油など)を買い取り、BDF(バイオディーゼルフューエル)へのリサイクルを行っています。このようにして再資源化されたバイオディーゼル燃料は、化石燃料の代替としてディーゼル車に使用されており、CO2の排出削減にもつながっています。
メタン化(バイオマス発電)
メタン化は、食品廃棄物を発酵させてバイオガスを生成し、電気や熱などのエネルギー源として再利用する手法です。この手法は、飼料化が不向きな食品廃棄物や分別が粗い場合でも処理できるというメリットがあります。
私たちは独自の事業として「エネルギーのリサイクルループ」に取り組んでいます。
この事業は、環境のミカタが食品廃棄物などを収集し、発電施設に搬入。そして、小売電気事業者が環境のミカタの顧客である排出事業者に新電力を供給するというものです。
この新たなリサイクルループでは、電気の地産地消という要素も重要なポイントとなっています。
4. 食品廃棄物を削減するためにできること
食品廃棄物を削減するために、まずは食品廃棄物・食品ロスに目を向け、当事者意識を持つことが大切です。ここでは、食品廃棄物を削減するために、家庭でできることと食品事業者ができることについて紹介します。
一人ひとりが家庭でできること
家庭での食品廃棄物削減は、日々の小さな心がけから始まります。 以下に、具体的な行動指針をいくつかご紹介します。
まず、買い物に行く前の準備が重要です。 冷蔵庫や食品庫の中身をチェックし、足りないものをリストアップしておきましょう。 これにより、同じものを重複して購入したり、必要以上に買いすぎたりすることを防げます。
購入した食品の保存方法も工夫が必要です。 期限の近いものから手前に置き、目に見える位置に保管することで、食品を忘れずに使い切ることができます。
調理の際は、賞味期限や消費期限が近いものから使用し、食べ切れる分だけ作るよう心がけましょう。 また、残った料理は冷凍保存するなど、食材を無駄なく使い切る工夫も大切です。
外食の際も、食べ切れる分だけ注文することを心がけましょう。 もし食べきれない場合は、お店に持ち帰りが可能かどうか確認し、可能であれば残った料理を持ち帰るのも良いでしょう。
これらの小さな心がけの積み重ねが、家庭からの食品廃棄物削減につながります。
食品事業者ができること
食品事業者には、より大きな責任と役割が求められます。 以下に、食品事業者が取り組むべき主な対策をご紹介します。
まず、製造・加工段階での取り組みが重要です。 食材の仕入れには、需要予測に基づいた適正量の管理が欠かせません。 また、在庫管理を徹底することで、食材の品質低下を防ぎ、廃棄量を減らすことができます。
仕入れた食材は可能な限り無駄なく使い切るよう工夫しましょう。 例えば、野菜の皮や茎なども活用するなど、食材の有効利用を心がけることが大切です。
販売段階でも、様々な工夫ができます。 賞味期限が近づいている商品は値引き販売を行ったり、少量パックやバラ売りなど消費者が食べ切れる量で購入できるようにしたりすることで、売れ残りを減らすことができます。
また、値引き販売を行う際は、消費者の不安を取り除くことも重要です。 値引きの理由や品質に問題がない旨を明確に伝えることで、消費者の購買意欲を高めることができるでしょう。
そして、やむを得ず発生してしまった食品廃棄物については、可能な限りリサイクルを検討しましょう。 飼料化や肥料化、メタン化など、様々な方法がありますので、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが大切です。
5. 食品廃棄物のリサイクルまとめ
本記事では、日本だけでなく世界的な問題となっている食品廃棄物のリサイクルについて詳しく解説してきました。 食品ロスの増加は、環境汚染や多額な処理費用、さらには途上国の飢餓問題にもつながる深刻な問題です。 この問題に対して、私たち一人ひとりが当事者意識を持ち、行動を起こすことが重要です。
食品廃棄物を削減するためには、食品事業者の取り組みだけでなく、私たち消費者の日々の行動も大切です。 買い物や調理、保存の方法を工夫するなど、家庭でできることから始めていきましょう。
環境のミカタは、静岡県で産業廃棄物処理の許可を取得している廃棄物処理業者です。 産業廃棄物として排出される食品廃棄物の収集やリサイクルも積極的に行っています。 リサイクル可能な廃棄物の種類についてなど、いつでもお気軽にご連絡ください。