建設現場から発生するコンクリートがらや木くずなどの廃材は適切に処理しなければ、環境への負荷や不法投棄といった問題を引き起こします。もし、これらの廃材が不法に投棄されれば、景観を損なうだけでなく、土壌や地下水の汚染、ひいては企業の信頼失墜にもつながりかねません。こうした課題に対応するために、建設資材の分別・リサイクルを義務付けた法律が「建設リサイクル法」です。
本記事では、建設リサイクル法の概要や、企業が果たすべき責任、当社のリサイクル技術による具体的な取り組み、コンクリートがらを製鋼副資材として再利用する技術などをご紹介します。
目次
建設リサイクル法とは?
建設現場で発生するコンクリートがらや木くずなどの廃材を、再び資源として有効活用するために定められたのが「建設リサイクル法」です。 この法律では、一定規模以上の工事を対象に、資材の分別や再資源化などを義務付けることで、環境負荷の低減と資源循環の促進を図っています。
ここでは、建設リサイクル法が制定された背景や、対象となる工事・資材について詳しく見ていきましょう。
目的と背景
建設リサイクル法は、正式名称を「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といいます。2000年に制定され、2002年5月31日に施行されました。建設工事で発生するコンクリート塊やアスファルト、木くずなどの特定建設資材廃棄物を減量化・再資源化し、適正に処理することを目的としています。
この法律が制定された背景には、当時、建設系廃棄物が産業廃棄物全体の約2割を占め、最終処分場のひっぱくや不法投棄といった問題が深刻化していたことがあります。従来は埋立処分に頼るケースが多かったため、環境負荷の軽減と資源の有効利用を図る仕組みとして、国を挙げたリサイクル推進が求められました。
環境省による令和4年度の調査でも、建設業由来の産業廃棄物は全体の約2割を占めていますが、法施行以降は再資源化が急速に進展。国土交通省の実態調査(令和6年度)では、建設廃棄物全体の再資源化・縮減率が97%を超えるなど、リサイクルの定着が確認されています。アスファルト塊やコンクリート塊は99%以上が再利用されており、もはや「廃棄物」ではなく「循環資源」として社会に組み込まれていると言えるでしょう。
建設リサイクル法は、こうした取り組みを支える基盤として、循環型社会の形成に欠かせない役割を担っています。
出典:産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度実績)について|環境省
対象となる工事と資材
対象となるのは、次の特定建設資材を使用する一定規模以上の建設工事です。
対象となる建設資材
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・コンクリート
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・コンクリートおよび鉄から成る建設資材(鉄筋コンクリートなど)
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・木材
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・アスファルト・コンクリート
これらの特定建設資材を使用する一定規模以上の工事を発注または自ら施工する場合、建設リサイクル法の義務が適用されます。
| 工事の種類 | 規模の基準 |
|---|---|
| 建築物解体工事 | 床面積80平方メートル以上 |
| 建築物新築・増築工事 | 床面積 500平方メートル以上 |
| 建築物修繕・模様替(リフォーム等) | 工事金額 1億円以上 |
| その他工作物に関する工事(土木工事等) | 工事金額 500万円以上 |
建設リサイクル法で求められる3つの義務
建設リサイクル法では、発注者や元請業者に対し、廃棄物の適正な処理と資源化を確実に行うための3つの義務を定めています。
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・届出の提出
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・分別解体の実施
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・再資源化の実施
これらの義務の履行は、法令遵守の基本であることに加え、環境負荷の低減に大きく貢献します。
届出の提出
1つ目の義務は届出の提出です。工事の発注者または自ら施工する者は、工事の着工7日前までに、分別解体や再資源化の方法などを記載した書類を、自治体(都道府県知事等)に提出しなければなりません。また、再資源化が完了した後も報告の義務があります。
これは、行政が建設リサイクル法に基づく適正な施工を事前に把握し、指導・監督を行うための体制を整える上で重要な手続きです。
分別解体の実施
2つ目の義務は分別解体の実施です。これは、工事の受注者(元請業者など)または自主施工者に対し、建設現場で建設資材廃棄物を資材ごとに分別しながら解体を行うことを義務付けるものです。
混合廃棄を防ぎ、リサイクルに適した単一の資源を確保することで、その後の再資源化工程の効率が大幅に向上します。
再資源化の実施
3つ目の義務は再資源化の実施です。分別したコンクリートや木材などの特定建設資材は、リサイクル施設で適切に処理し、再生資源として再利用しなければいけないと定められています。なお、一定の距離内に再資源化施設が無いといった場合に、縮減ができるケースもあります。
単なる廃棄ではなく、新たな製品の原料として生まれ変わらせることで、再資源化率の向上が実現し、環境負荷の軽減につながります。
再資源化の方法
建設現場から排出される特定建設資材は、その種類に応じて、さまざまな方法で再資源化されています。分別された廃材を廃棄物として処理するのではなく、新たな資源として活用する技術の進化が、循環型社会の実現を後押ししています。
ここでは、代表的なリサイクル方法と、当社による多様な廃材の再資源化への取り組みについて詳しく解説します。
代表的な再資源化の方法と具体的な取り組み
現場で分別された特定建設資材は、それぞれに適した処理を経て、再び社会で利用される再生資源となります。下表は、資材区分ごとの再資源化方法をまとめたものです。
| 資材区分 | 再資源化方法 |
|---|---|
| コンクリート | 破砕・選別後、再生クラッシャラン(道路路盤材など)や再生砕石として利用。適切に処理・成分管理されたものは、製鋼副資材として製鉄工程に再利用される場合もある。 |
| アスファルト コンクリート | 再生アスファルト合材として再利用 |
| 建設発生木材 | チップ化して燃料やボード原料に使用(熱利用が前提)。再資源化施設までの距離が長い場合や運搬コストが著しく高い場合は、「縮減」(焼却・脱水・圧縮など)による代替も認められている。 |
近年では、こうした従来型のリサイクル(路盤材や再生砕石など)に加え、製鉄工程で利用する「製鋼副資材」としての活用といった新しい循環ルートも広がりつつあります。これにより、これまで用途が限られていたコンクリートがらなども、より高付加価値な形で資源化できるようになりました。
多様な建設廃材を再資源化する取り組み
建設現場で発生する廃材には、コンクリートだけでなく、木くずや金属を含む混合廃棄物など、さまざまな種類があります。これらを適切に処理し、再び資源として活かすことが、循環型社会の実現に向けた重要な取り組みです。
当社では、こうした多様な建設系廃棄物の再資源化に向け、選別・処理体制の強化を進めています。現在も各資材の特性に応じた処理を行うとともに、廃棄物由来の製鋼副資材を製造する新工場を2026年初旬に稼働予定です。
新工場では、建設現場から出るコンクリートがらや、従来埋立処分されていた処理困難物の製鋼副資材化を中心に据え、破砕・選別・成分管理といった工程を一貫して実施する予定です。これにより、処理の効率化と品質の均一化を両立し、製鉄メーカーへの安定供給を実現します。稼働後は、天然資源の使用削減と環境負荷のさらなる低減に貢献していく方針です。
さらに、金属類を含む混合廃棄物についても、高度選別施設の導入を通じて、製鋼副資材として再資源化が可能です。これにより、排出事業者が現場で細かく分別する手間を軽減し、幅広い廃材を一括で適正処理できる体制を整えています。
また、建設発生木材はRPF(固形燃料)化により再生燃料として活用し、エネルギー資源の有効利用にもつなげています。
建設リサイクル法に基づく適正処理を前提としながら、多様な廃材の再資源化を支える柔軟な処理体制こそが、当社の大きな強みです。
コンクリートのリサイクル方法とは?用途や現状・課題についても解説>>
企業が押さえておくべき対応と注意点
建設リサイクル法の遵守は、企業の社会的責任を果たす上で欠かせません。法令違反は、罰則だけでなく、企業の信頼を大きく損なうリスクがあるため、徹底した対応が求められます。
法令遵守のための主な注意点
適正なリサイクルを実現するため、以下の点に特に注意して体制を整えることが重要です。
注意点
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◎契約書の明確化
契約書において、分別解体の内容や再資源化の方法、費用の負担などを明確に取り決めておく。
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◎マニフェストの活用
産業廃棄物管理票(マニフェスト)により、処理業者への引き渡しから最終処分までの工程を確実に記録・確認する。
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◎周知徹底
現場担当者や協力会社に対し、法律の目的や分別解体の手順、届出義務などについて教育・周知を徹底する。
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◎施工計画
再資源化率を意識した資材の選定や施工計画を立て、リサイクルを前提とした建設プロセスを確立する。
法令違反時のリスクと罰則
届出を怠ったり、分別解体・再資源化を故意に実施しなかった場合は、都道府県知事による指導・勧告・命令の対象となります。さらに、この改善命令に従わない場合には、罰金が科される可能性があります。
具体的には、命令違反に対する罰金は50万円以下、届出を怠った場合の罰金は20万円以下などと定められています。法令違反は、企業の信頼を失墜させ、長期的な取引関係にも悪影響を及ぼすリスクが高いため、現場での確認体制の構築が不可欠です。
まとめ
建設リサイクル法は、建設現場で発生する廃棄物を単なるゴミではなく「資源」として再び活かすための法律です。廃棄物を適切に処理し再資源化することは、環境保全だけでなく、企業の信頼やブランド価値の向上にもつながります。
法令遵守にとどまらず、積極的な再資源化への取り組みは、企業の社会的責任(CSR)や環境経営に直結します。資源循環と天然資源の消費抑制は、持続可能な社会の実現と社会的評価の向上を図るうえで重要な取り組みです。
環境のミカタでは、コンクリートがらを製鋼副資材として再利用する技術をはじめ、木くずのRPF化や、金属を含む混合廃棄物の再資源化など、多様な建設廃材の処理を一貫して支援しています。 地域と企業がともに環境負荷の少ない社会を築けるよう、建設リサイクルの推進を力強くサポートしてまいります。