
気候変動の深刻化により、地球温暖化対策は世界共通の課題となっています。日本でも2050年カーボンニュートラルの実現に向け、産業・地域・暮らしのあらゆる分野で脱炭素の取り組みが進行中です。
特にエネルギー起源のCO₂排出が多い製造業界においては、従来の燃料や素材を見直す転換期を迎えています。
本記事では、環境負荷の低減と資源循環を両立させる新たなアプローチとして、廃棄物由来の「製鋼副資材」の可能性に迫ります。また、こうした取り組みを紹介する「2025NEW環境展」への出展情報も紹介するので、ぜひご覧ください。
目次
脱炭素社会に求められる新たな燃料選択
温室効果ガスの排出を抑える脱炭素化は、気候変動対策として早急に取り組むべき課題です。なかでも製造業では、エネルギーや資源のあり方を見直す動きが加速しています。
ここからは、地球温暖化の現状や、CO₂排出の実態、そして産業界が抱える燃料面での課題について解説します。
脱炭素社会の必要性と現代の課題
地球温暖化の主因とされる二酸化炭素の排出は、産業革命以降に急増しており、すでに地球の平均気温は1℃以上上昇したと報告されています。その結果、猛暑や干ばつ、豪雨、森林火災といった気候災害が各地で頻発しており、今後も環境や社会活動へのさらなる影響が懸念されます。
こうした状況を踏まえて重要視されているのが、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を図り、実質的な排出ゼロを目指す「カーボンニュートラル」です。特に物流・製造・農業・建設などの分野では、SDGsを基軸に環境と経済を両立する持続可能な取り組みが進展しています。
カーボンニュートラルの達成には、企業の自主的な対応とあわせて、政府による政策的支援も不可欠です。カーボンニュートラルの定義や国内外の具体的な取り組みについては、以下のコラムでも詳しく解説しています。
カーボンニュートラルとは?目的や目標、日本と世界の取り組みを解説>>
石炭・コークスが抱える環境的課題
カーボンニュートラルの実現に向けて、見直しが求められているのが、長年エネルギー源として使用されてきた石炭やコークスです。これらは特に製鉄業を中心とする製造分野において、エネルギー源および還元剤として活用されてきました。なかでもコークスは鉄の精錬だけでなく、ガラス原料や非鉄金属の精錬など、さまざまな製造工程に欠かせない資源です。
しかし、これらの資源は燃焼時に大量の二酸化炭素を排出し、温暖化を加速させる原因となっています。実際、製造業全体のCO₂排出量のうち約3分の1が製鉄業に由来しており、その多くが石炭やコークスの使用に起因しているのが現状です。
加えて、これらの化石燃料は限りある資源であり、将来的には枯渇する可能性もあります。
天然資源 | 使い切るまでの年数 |
---|---|
天然ガス | 約50年 |
石油 | 約50年 |
石炭 | 約130年 |
ウラン | 約115年 |
持続可能な社会の実現には、こうした課題に向き合い、再生可能エネルギーや代替資材への転換が必要不可欠です。
廃棄物由来の製鋼副資材とは?その特徴と環境へのメリット
製鉄業では、環境への負荷を抑え、限りある資源を有効に活用する取り組みが求められています。そこで注目されているのが廃棄物由来の「製鋼副資材」です。これは、これまで埋立・焼却処分されていた塩素濃度の高い廃プラスチック類などの処理困難物を再利用したもので、資源循環に貢献する素材として活用が進んでいます。
ここからは、この製鋼副資材の役割や特徴、製鉄工程における利点について見ていきましょう。
代替素材として注目される廃棄物由来の「製鋼副資材」

製鉄工程では、これまで製鋼副資材として天然の鉱物や石灰が用いられてきましたが、近年ではリサイクル困難とされていた廃棄物を、製鋼副資材の原料に活用する取り組みが進んでいます。例えば、廃プラスチックや複合材、金属付きプラスチック、太陽光パネル、燃えがら、ばいじん、鋼さいなどが高度選別や破砕を行うことで製鋼副資材として再資源化できるようになりました。
従来は埋立や焼却に依存していた廃棄物が、新たな価値を持つ素材として循環されるようになり、資源の有効利用と環境負荷の低減の両立が期待されています。
技術的特徴と環境的メリット
廃棄物由来の製鋼副資材は、代替素材として製鋼工程において価値を発揮します。
例えば、電炉メーカーでは製鋼副資材を加炭材として活用し、鉄の炭素量を調整する工程で使用されています。従来この工程では石炭が主に使われていましたが、廃棄物由来の加炭材の導入により限りある化石資源の使用を抑えることが可能です。これにより、資源の枯渇リスクを軽減する取り組みとしても注目されています。
また、高炉メーカーでは、脱炭工程で発生するスラグ(副産物)の膨張を抑える「フォーミング抑制剤」として使われるものもあります。これは、吹きこぼれの防止や操業トラブルの抑制を目的として使用されるものです。なお、この用途には従来、石灰石などが用いられてきました。
このように廃棄物由来の製鋼副資材は、メーカーごとに適した用途で活用されることで、資源循環と環境負荷の低減の両立に貢献する、有効な技術のひとつといえるでしょう。
2025NEW環境展で紹介する技術と展望
リサイクル技術の進化により、廃棄物由来の新たな製鋼副資材が注目されています。
なかでも、廃棄物由来の「フォーミング抑制剤」や「加炭材」の開発・製造を手がける株式会社大瀧商店は、廃棄物の高付加価値化に取り組んでいます。環境のミカタは同社と連携し、リサイクル困難とされてきた最大13品目の廃棄物を原料とする製鋼副資材や、固形燃料(RPF)化など、循環型社会の実現に向けた技術を展開しています。
これらの技術は、2025年5月開催の「2025NEW環境展」にて紹介予定です。環境のミカタと大瀧商店の2社共同で出展し、資源循環や環境保全に貢献する再資源化技術をご案内します。

さらに、2026年初旬稼働予定の新工場「EP0(仮称)」についてもご案内いたします。本工場では、県内最大級の破砕(高度選別設備)および、国内最大級の製鋼副資材製造設備の導入を予定しており、より高度なリサイクルの実現を目指しております。
製鋼工程の安定化やCO₂排出量の削減を検討中の企業にとって、有益な情報を得られる絶好の機会です。ブースは【東4 C408】にてお待ちしています。ぜひブースにお立ち寄りいただき、最新のリサイクル技術をご体感ください。 なお、本展示会は完全事前登録制となっており、登録せずに入場される場合は有料になります。以下より、事前登録をお願いします。
環境展に関する詳細や、過去の出展内容については以下よりご覧いただけます。
国内最大級の環境をテーマに開催するイベント「NEW環境展」とは?>>
まとめ
廃棄物由来の製鋼副資材の活用は、地球温暖化の抑制や、天然資源の消費抑制といった、課題解決に向けた取り組みとして注目されています。廃プラスチックや複合材など、従来はリサイクルが難しかった廃棄物を再資源化し、製鉄工程で有効活用することで、循環型社会の実現に貢献することが可能です。
環境のミカタでは、株式会社大瀧商店と連携し、廃棄物由来の製鋼副資材やRPFの製造など、多様な再資源化技術を提供しています。廃棄物の回収や、再資源化に関するご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
